今日の神坂課長は、新美課長とランチ中のようです。

「へぇ、恩師とそんな話をしたのか。俺もつい先日、恩師のもとを訪ねたんだけど、やはり恩師に会うと身が引き締まるよな」(新美課長の恩師との会話については、第1552日をご参照ください)

「そうなんですよ。立派な人というのは、厳しさだけでなく、そこに尊さがあるんですよね。だから、厳しくてもついていこうと思うのでしょうね?」

「なるほどなぁ。まてよ、それって俺をディスってるわけじゃないよな?」

「あ、言われてみればディスってるかも知れません?」

「ふざけるな。最近、お前もちょっと大累に似てきたな。先輩を立てることを忘れたら、下の奴らはついてこないぞ」

「だから、私たちは神坂さんについていくのが不安だったわけですよ!」

「なるほど、って納得してどうするんだよ!」

「でも、やはり厳しさというのは必要だと思うんですよ。甘やかせて育った人間は、窮地に陥ったときには弱いですからね」

「そうなんだよな! しかし、今はちょっと言葉が過ぎただけで、すぐにパワハラだと訴えられる世の中みたいだからな」

「どうやったら、尊さをもった厳しさを発揮できるのでしょうかね?」

「この前、ペップトークの研修を聞いてきたんだけどな」

「ペップトーク?」

「そう、スポーツの世界で監督やコーチが試合前に話すショートスピーチをペップトークっていうらしいんだ。要するに、短時間で選手をグッとやる気にさせる一言みたいなもんだろうな」

「なるほど」

「それで、その講演の中で講師が言っていたのは、まずなにより大事なのは受容だって言ってた。つまり、一旦相手の気持ちや環境を受け入れる必要があるということらしい」

「受容ですか・・・。たしかに、それは大切な気がしますね」

「ほら、俺なんかすぐに頭ごなしに「何を弱気なこと言ってるんだ」とか、「お前、馬鹿じゃないの?」なんてやってしまうだろう。あれは一番マズイらしい」

「今頃気づいたんですか・・・」

「悪かったな、鈍感な先輩で! それでだよ、しっかりと相手を受けとめたあとに、考え方をネガティブからポジティブに変換し、してはいけない行動ではなく、してほしい行動を指示して、最後に背中を押すという一連の言葉をペップトークって言うんだよ」

「面白そうですね」

「それで尊敬の念を得られるかはわからないけど、俺たちリーダーの存在というのは、メンバーが話を聞いてくれてナンボってところがあるだろう。そういう意味では学んでみる価値はあるなと思ったんだ」

「なるほど、私も勉強してみます」


ひとりごと

無暗に厳しい上司というのは、今の時代にはマッチしないでしょう。

しかし、部下からの指摘を恐れて「ことなかれ主義」に走るのはいかがなものでしょうか?

厳しさの中に尊さを感じさせる言動をするには、何を学び、どんな実践をすべきなのか?

今、答えはありませんが、つねに追求すべき大命題だと感じます。


【原文】
師厳にして道尊し。師たる者宜しく自ら体察すべし。「如何なるか是れ師の厳、如何なるか是れ道の尊き」と。〔『言志後録』第174章〕

【意訳】
『礼記』に「人の師たる者は尊厳さが備わってはじめてその道が尊いものになる」とある。人の師たる者は、「師としての尊厳さとはいかなるものか、師の道の尊さとはいかなるものか」と、これを自ら体験し察するべきである。

【ビジネス的解釈】
師たる者は尊厳とは何かを常に追い求めねばならない。ただ厳しいだけでは尊さは生れないことに気づくべきである。


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