営業部特販課の大累課長が、部下の雑賀さんのプレゼンテーションをチェックしているようです。

来週前半に、川尻記念病院での大口商談に関して、競合数社とプレゼン対決を控えているようです。

「雑賀、熱い想いを持っていることは伝わってくるが、あまりにも情報量が多すぎるぞ。あれもこれも伝えようとし過ぎていないか?」

「そうですかねぇ? どこが院長先生の心を捉えるかわからないので幅広く提案しようと思ったのですが・・・」

「あらかじめ院長先生のニーズやウォンツは明確にしてあるんじゃないのか?」

「はい、経営者ですから、なるべくリーズナブルに安全性を確保したいと考えているようですので、そこがポイントだとは思うのですが・・・」

「それならそこに絞り込め。仮説を立てて臨むんだ。少なくとも安全性をリーズナブルに提供できる点で攻めれば、的外れにはならないだろう?」

「それはそう思います」

「コミュニケーションのポイントは、相手にどう伝わったかだ。こちらの想いがどうあれ、相手にどのように伝わるかですべて決まってしまう」

「はい」

「だから、あまりにも商品にのめり込み過ぎては駄目だ。なるべく言葉を絞り、それを研ぎ澄ますんだよ。相手の心のスクリーンに映像が描かれるように、言葉を選んで語るんだ。なあ、雑賀。今回の提案のキラーワードはどんな言葉だと思う?」

「キラーワードですか?」

「そう。いわゆる殺し文句ってやつだよ」

「なんだろうなぁ。『安全は後回しにはできません』というのはどうですか?」

「良いじゃないか。それを最初に打ち出して、その理由を3つに絞り込もう。そこから、このシステムが何故ご施設に最適なのかを伝えてクロージングに結びつけるんだ」

「大累課長、ありがとうございます。もう一回作り直してみます!」


ひとりごと

営業の世界において、自分が提案する商品を好きになることは必要不可欠なことです。

しかし、愛着を持ち過ぎてしまうと、想いが溢れすぎて、その良さを正しく伝え切れません。

プレゼンでは、いかに言葉を絞り、研ぎ澄ますかが勝負です。

それを端的に表すには、一斎先生の「語簡にして意達するを要すのみ」という言葉は至言です。


【原文】
人と語るには、太だ発露して傾倒に過ぐ可からず。只だ語簡にして意達するを要すのみ。〔『言志後録』第192章〕

【意訳】
人と会話をする際は、口数多く、一から十まで口に出して、のめりこむようではいけない。ただ言葉を簡素にして、意味がよく相手に伝わるように心がけること重要だ

【ビジネス的解釈】
伝わるコミュニケーションとは、大量の情報を垂れ流すことではなく、言葉を絞り研ぎ澄ますことである。


presentation_man