今日の神坂課長は、営業2課の石崎君、善久君、梅田君を連れてJリーグの試合を観戦しているようです。

「なんだよ、グランパスは防戦一方じゃないか。もう少し攻撃してくれないと面白くないな」
石崎君は不満そうです。

「ザキ、俺はそうは思わないな。レッズとの実力差を考えると、守りを固めて一瞬のカウンターで勝負に出るというのが手堅い戦い方だと思うよ」
善久君はなかなかサッカー通のようです。

「おー、ナイスセーブ! ランゲラックのセービングはスゴイですね!」
梅田君です。

「おーっ、一瞬の隙を突いてカウンターだ。よしっ、決まった。さすがはジョー、元ブラジル代表フォワードだなぁ」

グランパスが1点を先制したようで、神坂課長も興奮しています。

結局、試合は後半ロスタイムにレッズが同点に追いつき、1対1のドローで終わりました。

4人は、そのまま最寄り駅近くにある居酒屋に入ったようです。

「課長、攻撃と守備ってどちらを重視すべきなのですかね?」

「そりゃ、石崎。攻めなきゃ勝てないんだから、攻撃重視だ、と言いたいところだが、実は強いチームというのは守りがしっかりしているものだ。野球もまったく同じだよ」

「それならレッズは、グランパスに攻めさせて、一瞬のカウンターで得点するという戦い方をした方が良かったのではないですか?」

「でも、それじゃ面白くないだろう。特にプロスポーツの場合は、魅せるということも意識して欲しいからな」

「なるほど」

「かつて、落合博光が監督をしていたときのドラゴンズは強かった。投手陣がしっかりしていたし、荒木と井端の鉄壁な守備があった。ただ、いかんせん面白い野球ではなかった」

「でも、プロなら勝つことが最優先なのではないですか?」

お、梅田、鋭いな。たしかにそうかもしれない。でも、観戦する側からすると打ち合い、点の取り合いの方が面白いんだよな。少なくとも攻撃しない限り、点は入らないからな。守備を固めるのは負けない戦い方ではあるが、勝つためにはどこかで攻めないといけない

「なるほど」

「営業の仕事も同じですね。今のお客様を維持するだけでは、売上は増えないですもんね?」

「おー、善久。仕事に置き換えて来たか。基本的にはそうだな。だから、お前たちにも新規開拓をお願いしているわけだ」

「そうですね。でも将来的には、営業マンが定期的に顔を出して、アフターサービスを充実させたいですね。それで、お客様との信頼関係を築いて、紹介をもらえるのが理想じゃないですか?」

「石崎、お前スゴイな。それがまさに強者の営業戦略だよ。守っていながら攻めていることになるからな。いや、お前たち、たった1年ちょっとで成長したな!」

「じゃあ、ここは課長の奢りで!」

「最初からそのつもりだよ!!」


ひとりごと

攻撃は最大の防御なり。

という言葉がありますね。

しかし、攻撃にばかり目が向きすぎると、守りを怠りがちになります。

その結果、一瞬の隙を疲れて形勢が逆転するというケースは、プロスポーツの世界のことだけではないでしょう。

一斎先生の言う「攻めざるを以て攻める」という守りの意識も忘れないように、この言葉を心に刻みます。


【原文】
攻むる者は余り有りて、守る者は足らず。兵法或いは其れ然らん。余は則ち謂う、「守る者は余り有りて、攻むる者は足らず」と。攻めざるを以て之を攻むるは、攻むるの上なり。〔『言志後録』第195章〕

【意訳】
攻める者には勢力に余裕があり、守る者には勢力が不足している。これは兵法においてはその通りであろう。だが私としてはこう言いたい。「守る者には余裕があって、攻める者には余裕がない」と。攻めないでいて、相手を攻めるというのが、最上の攻め方なのだ

【ビジネス的解釈】
攻撃と守備、どちらを重視すべきかは重要な問題である。彼我の実力をしっかりと分析し、臨機応変な戦い方を採らねばならない。ただし、「最大の攻撃は守りを固めることだ」という意識も忘れてはならない。


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