今日の神坂課長は、営業1課の新美課長とランチ中のようです。

「最近、『貞観政要』という古典を読み始めたんですけど、なかなか教えられることが多いですね」

「ああ、帝王学の参考書といえば、『書経』か『貞観政要』だと、昔から相場が決まっているらしいからね。俺はもっぱら『書経』を読んでいるんだけど、なかなか難しいんだよな」

「解説に書いてあったんですけど、『貞観政要』が出でからは、『書経』よりこちらが読まれたらしいですね」

「『書経』は最古の古典とも言われているからね。文体が古くて解釈が難しいんだろうな。それで、具体的にはどんな内容なんだ?」

「たとえば、平和なときこそ危機に備えるべき、とか、リーダー自身がまず我が身を正せ、とか、部下の諫言を聞き入れろ、といった内容です」

「それは耳が痛い内容だな」

「特に感心するのは、太宗という人は常に部下の諫言に耳を傾けようとしたことでした」

「それが一番難しいよな」

「そうですね。誰でも批判よりは賞賛の声を聞きたいですからね。しかし、そうなると手元にはイエスマンしか居なくなってしまいます」

「イエスマンは上司を褒めることはしても、忠告を与えることはないからな」

「人材を見極める目を持ち、自分のことを正してくれるような人材を手元に置くということが一番大切なことなのかも知れませんね」

「たしかにな。意外と偽者に限って口は達者で、自分を良く見せる術には長けているからなぁ」

「一方で本当に中身が備わっている人というのは、自己主張をしないので、こちらから見つけてあげないと登用されないですよね」

「偽者と本物を見抜く目を養わないといけないな」

「はい。そして、それ以前に自分自身が本物にならなければいけないでしょうね」

「そういうことになるな。そうえいば、孔子がこんなことを言っている。『リーダーが品行正しく行動すれば、命令などしなくても部下は動く。逆にリーダーの品行が良くないと、いくら命令しても部下は動きはしない』ってな」

「やはり、まずは自分磨きからということですね!」


ひとりごと

昔から帝王学(人の上に立つ人が学ぶべきこと)の教科書として、『貞観政要』という古典が読み継がれています。

この書は、唐の第二代皇帝・太宗李世民とその臣下(重臣)との問答を記録した問答集です。

とくに魏徴(ぎちょう)という臣下は、太宗にズバリと諫言をぶつけてきます。

太宗はこうした人材を遠ざけることなく、むしろ積極的に意見を聞いて、自分の身を正して生きます。

その結果、貞観の治と呼ばれる平和な時代を築き上げたのです。

我が身を正し、諫言を受け入れ、それを実行に移す。

これが理想のリーダーシップなのでしょう。


【原文】
人才に虚実有り。宜しく弁識すべし。〔『言志後録』第211章〕

【意訳】
人の才能には、虚(才能がないのにあるように見せかけるもの)と実(実際に才能が充実しているもの)がある。しっかりと判別すべきである

【一日一斎物語的解釈】
人の上に立つ者は、登用しようとする人物が本物なのか偽者なのかを見極める目を持たねばならない。そしてそのためにはまず自分の身を正しくすることが先決である。


pop_honmono