J医療器械では、前期の評価会議が行われているようです。

参加者は、西村総務部長、大竹総務課長、鈴木人事課長、佐藤営業部長に神坂・大累・新美の営業部の3人の課長のようです。

「清水君は成績はずば抜けているが、やはり行動評価の面では協調性等に問題があるよね。S評価までは与えられないかな?」
西村部長です。

「今期はだいぶ変わってきたんじゃないのか、新美?」

「はい、神坂さんの言うとおりで、今期はチーム全体のことを考えて行動してくれました。それにあれだけの成果を上げながら、残業時間は社内で最も少ないのも評価すべきだと思います」

「サトちゃんはどう思う?」

「そうですね。成績は文句のつけようがありません。行動評価については、西村さんがご指摘の点が彼の課題ではありますが、決して組織の和を乱しているわけではありません。完璧な人にしかS評価を与えられないとするなら、S評価を取れる人はいなくなるでしょう。ここはS評価で問題ないと思います」

「異論のある方はいますか?」
司会の鈴木課長です。

「いらっしゃらないようなので、清水君はS評価とします。新美君、ぜひ清水君には協調性の課題をしっかり伝えて更なる改善を図るように指示してください」

「はい、承知しました」

評価会議後、営業部の3課長が喫茶コーナーで談笑しています。

「神坂さん、清水さんの件、フォローしていただいてありがとうございます」
新美課長が切り出しました。

「そもそもウチの会社に完璧な人間なんかいるはずないんだから、細かい点は目をつむる必要があるからね。なぁ、大累」

「そうですね。ある程度は清濁併せ呑むという意識が必要でしょうね。道徳的な観点からみて問題があるようなメンバーは減点対象となるでしょうけど」

「雑賀は相変わらず遅刻が目立つもんな」

「そうなんですよ、残業時間も社内一ですしね」

「そもそも俺も以前は時間ギリギリで出社していたから、少しでも電車が遅れると遅刻するような人間だったからなぁ。偉そうなことはいえないけど、佐藤部長が言ったように、組織の和を乱すような行動は改善させないといけないよな」

「そこは引き続き指導していきます」

「完璧な人というのは、目指すべきではあっても、実際には存在しないからな。ひとつずつ自分の課題を改善していくしかないよな」


ひとりごと

自分自身が完璧でないことには気づいているのに、部下や後輩に完璧を求めてしまう

そんな経験がありませんか?

もし、部下や後輩を大きく育てたいなら、小さなことには目をつむり、失敗を容認し、チャレンジさせるしかありません。

そのときの規準は、倫理的・道徳的な逸脱行為があるかないかだ、と一斎先生は教えてくれます。


【原文】
人の賢不肖を論ずる、必ずしも細行を問わず。必ず須らく倫理大節の上に就きて、其の得失如何を観るべし。然らざれば則ち世に全人無けん。〔『言志後録』第215章〕

【意訳】
人が賢いか否かを論ずるときは、必ずしも細部の行動を問題にすべきではない。必ず総合的に倫理道徳の根本に照らして、その行動の得失を観察すべきである。世の中に完全な人はいないのであるから、そうするしかないのだ

【一日一斎物語的解釈】
人を評価する際は、あまり小さな点には目をつむり、倫理的・道徳的な観点から判断することを基本とすべきだ。完璧な人間を求めていては、組織を強くすることはできない。


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