今日の神坂課長は営業2課のミーティング中のようです。

「善久、8月の売上予定が消耗品だけというのはどういうことだ?」

「8月は今のところ見込んでいるものがないので・・・」

「白紙の月を作るなって、あれ程言ったのに、またか? 8月は何も売らないつもりか?」

「いや、売らない訳じゃないです」

「だったら何かあるだろう、お前が売りたいと思っている物が!」

「売りたい物はありますが、売れるかどうかはわからないので・・・」

「お前、やる気あるのか!!」

会議後、神坂課長は新美課長とランチに出かけたようです。

「ということで、またイラッとして厳しい事を言ってしまったんだよなぁ」

「気持ちはわかりますけどねぇ。神坂さんは言い方がキツイですから、言われた方は相当落ち
込むと思いますよ」

「短気は損気って、昔から言うもんなぁ。そういうとき、お前ならどう言うんだ?」

「そうですね。『そのために売上の見込みランクがあるんだから、せめてCランクで登録したらどうだろうって言いますかね?」

「なんか、まどろっこしいな」

「そうですけど、やはり上司は我慢が大事ですよ。上司が我慢した分だけ信頼の和が大きくなりますから」

「信頼の和か。そういえば、『信なくんば立たず』って部長に言われたばかりだった!」

「善久君はウチの廣田君と似ていますね。自分に自信がないんですよ」

「そう思う。そういう奴にはどう接すれば良いんだろうな?」

「しっかり準備をさせることと、小さな成功体験を積み上げさせることでしょうね」

「準備?」

「神坂さんもよく言うじゃないですか。しっかり準備をしていない人は自信を持てないって」

「ああ、そうだったな。しばらくあいつの商談の準備に付き合うかな」

「ロープレとかやってあげるのも良いんじゃないですか?」

「それがダメなんだよ。ロープレでドクター役をやると、いつの間にか意地悪なドクターになってしまうんだよなぁ」

「最悪じゃないですか! 神坂さんは短気というより、単に性格が悪いのかも知れませんね」

「やかましいわ!!」


ひとりごと

なんとタイムリーな章句でしょう!!

実は今日、勤務先で元部下だった課長さんをかなり厳しく叱責してしまいました。

言わなければならないと思ってのことではありますが、どういう風に理解してくれたのか?

もしかしたら、また信頼の和に大きな亀裂が入ったのかも知れません。

「短気な人が事を成せるはずがない。せいぜい部屋の掃除が出来る程度だ!」という一斎先生の言葉が胸に突き刺さります!


【原文】
肝気有る者は多く卞急(べんきゅう)なり。又物を容るること能わず。毎(つね)に人和を失う。故に好意思有りと雖も、完成する耐(あたわ)ず。或(あるひと)謂う、「稍肝気有れば、卻って能く事を了す」と。余は則ち謂う、「肝気悪(いずく)んぞ能く事を済(な)さん。厪(わず)かに一室を灑掃(さいそう)するに足るのみ」と。〔『言志後録』第226章〕

【意訳】
すぐに怒る人は大概いらいらしてせっかちである。また人を受け容れることができない。つねに人との和を失っている。それゆえに良い考えがあると雖も、それを完成させることができない。ある人が「すこしくらい怒気があった方が、うまく事を成就できる」と言ったが、私は「怒気がどうして事を成すことがあるだろうか。せいぜい部屋を掃除できる程度である」と言いたい

【一日一斎物語的解釈】
短気な人間は、人間関係を良好に保つことができないために、仕事を成就することができない。短気は損気以外のなにものでもない。


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