今日の神坂課長は、総務課の大竹課長に誘われてランチに出かけたようです。

「神坂君、なんか凄い本を買ったらしいじゃない?」

「え、タケさん、なんで知ってるの?」

「ちさとママから聞いたよ」

「あのおばはん、口が軽いんだよな」

「別に隠すことじゃないだろう?」

「そうだけどね。まあ、中国古典を本気で学んでみようと思ってね」

「しかし、神坂君が中国古典の全集を買う時代が来るとはね!」

「この世の終わりが近づいているかも?」

「決して、中国人が皆優れているとは思わないけど、やっぱり彼らは頭はいいんだろうな。今、デジタルの世界では、中国とアメリカの企業がほぼ独占状態みたいだし」

「一方でこうしたアナログ中のアナログの読書の世界においても、中国古典は心に響きます」

「どれだけ世の中がデジタルで便利になっても、人間の心は所詮アナログだもんね」

「そうなんです。『論語』が書かれたのは二千五百年も前なのに、書かれていることは今でも通用するものが多い。読書に関しては古いか新しいかは関係ないですね」

「むしろ、瞬間的に売れている本を読むより、売れ続けている本を読むべきなんだろうな」

「そういう意味では、中国の古典は良いですよ。もちろん、中江藤樹や佐藤一斎も良いですけどね」

「藤樹さんは良いね。『翁問答』は俺の愛読書だよ」

「そうでしたね。タケさんは藤樹さんと森信三先生でしたね」

「そうそう、モリゾーさんは素晴らしいよ」

「誰ですか、モリゾーって!」

「もりのぶぞう先生に決まっているでしょ」

「その呼び方、全然敬意が足りないじゃない!」

「違うよ、好きすぎて、『モリゾーちゃんて呼ぶしか気持ちが伝わらないの」

「気持ち悪いな。俺も『修身教授録』って本を読んでみようかな?」

「日本の書籍の中でも最高ランクの書だから、ぜひ読みなさい。読み終えたら、『実践人の家』
に連れていってあげるから」

「どこですか、そこ?」

「モリゾーちゃんが晩年暮らしていた家をそのまま保存しているところが兵庫県の尼崎にあるんだよ」

「へぇー、興味あるな」


ひとりごと

読書の鉄則は、「売れている本」ではなく、「売れ続けている本」を読め。

小生が師事する方はそう言います。

そういう点では古典は、まさに「売れ続けている本」です。

ただし、原文で読むのは大変ですので、自分が好きな研究家をみつけて解説付きで読むのが良いでしょう。

小生の場合は、守屋洋先生の本に出会って、中国古典の面白さに引き込まれました。


【原文】
周易は両呂の復古自(よ)りして、朱子其の本を用う、亦見る有り。程伝は則ち名は伝注なるも、而も実は経と亜(つ)ぐ。書本の古今を論ぜず。最も高し。〔『言志後録』第230章〕

【訳文】
『易経』は、宋の呂大防と呂祖謙の二人が『周易古経』を著して、経と伝の分巻を復活させたが、さらに南宋の朱熹はそれを本に『周易本義』を著した。これらの書物は学ぶに値するものである。程伊川の『易伝』は、その名は伝(注釈)となっているが、実際には経書に準ずるほどの作品である。書物については古今は関係なく、ここに挙げた書籍は最高の書物と言えるものである

【所感】
読書をするなら、「売れている本」ではなく、「売れ続けている本」を読め。


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