(昨日に引き続き)今日の神坂課長はN鉄道病院名誉院長・長谷川先生のお部屋を訪ねているようです。

「とても勉強になりました。先生、もうひとつ教えてください。先生はルーティンをもっていますか?」

「教授職を退いた後は、毎朝5時に起きて、まず1時間ほど静かに瞑想することかな。時間があれば、寝る前にも30分~1時間程度瞑想することもあるよ」

「瞑想ですか? そのときは静坐をされるのですか?」

「座布団の上に座る感じだね」

「効果はありますか?」

「効果は絶大だよ。朝起きてすぐに瞑想すると、一日を気持ちよく始めることができる。今日何をするかを静かに思い起こし、優先順位をつけ、どのように仕事を処理するかをシミュレーションするんだ」

「そういう時間は大切ですね」

「うん。夜の瞑想は、さっきの神坂君じゃないけど、一日の反省だね。今日は世の中に貢献する仕事ができたか、親孝行・自己修養・人材育成について、しっかり行動できたか、といったことを振り返るんだ」

「それを1時間もやるのですか?」

「毎日はできないけど、時間があればやる。別に時間にこだわる必要はないと思うよ。5分でもいいから瞑想すると良いね。そして、最後はかならず前向きな思考で瞑想を終えるのがポイントだよ。そうすれば気持ちよく眠りにつけるし、朝起きたときに頭の中でポジティブな思考ができあがっていることが多いから」

「まずは5分から始めてみようかな。長谷川先生、読書はどんな本をお読みになるのですか?」

「いまは経書が多いね。特に朝は『論語』と決めている。もう七十年以上読み続けているからねぇ」

「あ、それは佐藤から聞いています。ということは『論語』については隅から隅まで暗記されているのでしょうね?」

「たしかにほとんどの章句は頭には入っているよ。でもね、不思議なことに今でも多くの気づきを得ることができるんだよ。自分が悩んでいたことの答えやヒントが書かれていて驚くことがよくあるよ」

「すごいですねぇ。それが『論語』の深さということでしょうか?」

「そう思うな。神坂君も『論語』を読み始めたんだよね?」

「はい。ただ、私の場合は先輩の読書会で読んでいる程度なので、毎日というわけにはいきません」

「別に『論語』でなくても良いから、手元において置くだけで安心するような愛読書をもつといいよ」

「愛読書かぁ。長谷川先生、今日も大変勉強になりました。愛読書探しと5分間の瞑想。さっそく取り組みます!」


ひとりごと

一日のルーティンをもつことは良いことでしょう。

小生の場合、読書はルーティン化していますが、瞑想については取り組もうとしてすぐに挫折しました。

神坂課長のように、まずは5分の瞑想から再開してみます。


【原文】
毎旦(まいたん)鶏鳴きて起き、澄心黙坐(ちょうしんもくざ)すること一晌(いっしょう)。自ら夜気の存否如何を察し、然る後に蓐(しとね)を出でて盥嗽(かんそう)し、経書を読み、日出て事を視る。毎夜昏刻より人定に至るまで、内外の事を了す。間(かん)有れば則ち古人の語録を読む。人定後に亦澄心黙坐すること一晌。自ら日間行ないし所の当否如何を省み、然る後に寝に就く。余、近年此を守りて以て常度を為さんと欲す。然るに、此の事易きに似て難く、常常是の如くなること能わず。〔『言志後録』第245章〕

【意訳】
毎朝鶏の鳴き声で目を覚まし、しばらく心を澄まして黙して坐する。夜明けの清明な空気があるかどうかを察し、その後に寝床を出て顔を洗い口をすすぎ、経書を読み、日が昇ると仕事をする。毎晩夕方から夜の八時ごろまでに公務を終える。時間があれば古人の語録を読む。八時以降はまた心を澄ませ黙して坐すること一時ほど。日中の行いが正しかったかどうかを反省し、その後眠りにつく。私は近年、こうした生活を守って平素のきまりとしようと望んでいる。ところがこれは簡単そうでいて難しく、いつもこのようにできないことが多い

【一日一斎物語的解釈】
一日のルーティンを決めることはよいことである。理想的には、そのルーティンのなかに瞑想と読書を取り入れたい。


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