今日の神坂課長は、大累課長と一杯やっているようです。
「しかし、人のマネジメントは難しいですね」
「そうだな。でもな、それは当然のことらしいぞ」
「どういうことですか?」
「この前、あるセミナーに参加したときに、講師の先生が言ってたんだけどな。そもそも日本はマネージャーに昇格させてからピープルマネジメントを学ばせるだろう?」
「そうですよね」
「そんなのは日本だけらしい」
「え?」
「つまり、欧米ではそもそもピープルマネジメントができる人をマネージャーに上げるらしいんだ」
「なるほど。そういえば、日本はスポーツの世界でもそうですね。名選手でないと監督になれませんよね」
「確かにそうだな」
「じゃあ、どの程度自由にさせるか、あるいは締め付けるかを今更悩んでも遅いってことですね」
「しかし、それを言っては元も子もないから、なんとかやりくりするしかないよな」
「どうすればうまくマネジメントできるのかなぁ」
「メンバーに敬意を払うことが重要らしいぞ。お前、雑賀に敬意を払って接しているか?」
「あいつに敬意ですか! そういう神坂さんは石崎に敬意を持って接しているんですか?」
「あのクソガキにか? 無理無理! けどな、お前はお前が上司だったら、一緒に働きたいと思うか?」
「おっと、そう言われると」
「だろう? そう思えば、あいつらよくぞ働いてくれていると思えないか?」
「思えます!」
「ははは、お互いにその辺りから敬意を払っていこうぜ」
ひとりごと
放任主義は一見すると伸び伸びとメンバーを育てるかのように見えますが、実は窮地に立つと組織が機能しなくなるというリスクももっています。
一方、抑圧的なマネジメントでは、メンバーは主体性を発揮せず、やらされ感のなかで仕事をすることになります。
適度なバランスを保つのは難しいことですが、一斎先生はそのポイントは「敬」にありとしています。
皆さんは、ご自身の部下の社員さんに敬意を払っていますか?
【原文】
放鬆(ほうしょう)任意は固より不可なり。安排(あんばい)矯揉(きょうじゅう)も亦不可なり。唯だ縦(じゅう)ならず束ならず。従容として以て天和を養うは、即便(すなわ)ち敬なり。
【意訳】
あまりに勝手気ままに行動することは宜しくない。しかし、適当に処理したり矯正し過ぎるのも宜しくない。自由放任することなく、締め付けすぎず、ゆったりとして調和を得た天の道を養うということ、これがすなわち敬ということなのだ、
【一日一斎物語的解釈】
自由放任は良くないが、締め付けすぎてもいけない。常にメンバーに対して敬意を忘れないことが肝要である。