神坂課長と大累課長は久しぶりに二次会に流れ込んだようです。

「ひっく(しゃっくりしながら)。だいたい雑賀のやつ、俺を上司だと思ってないんじゃないかと思うんですよ」
大累課長はだいぶろれつが回らなくなっています。

「さっきから雑賀の欠点ばかりをあげつらっているけどさ、あいつにだって良いところはあるだろう」
神坂課長の目もすわっています。

「まあ、なくはないですけどね」

「わかった、じゃあ、お前自身の欠点を7つあげてみろよ」

「7つもないですよ!」

「あるわ、いくらでも!」

「なんだと、カミサマ! 今のは納得いかないな」

「ほらみろ、すぐに酒に飲まれること、先輩を先輩と思わず暴言を吐くこと。これもお前の欠点だ」

「神坂さんの欠点もたくさんありますよ。すぐに手を出すこと、後輩をバカにすること、ケチなこと」

「ケチ? それは聞きづてならないな。お前にはそこそこ奢ってるはずだぞ」

「そうですかね?」

「ははは、やっぱり他人の欠点は見つけやすいな。それに引き換え自分のこととなると全然自己分析ができてない」

「確かにそうですね(笑)」

「まずは、メンバーに敬意を払う意味でも、10のうち7つくらいは長所をあげるようにした方が良さそうだな」

「そうですね。神坂さんの良いところは、切り替えの早いところだな」

「お前の良いところは、そういう素直さだ」

「後輩や部下に対する熱意もすごいと思います。尊敬しますよ」

「後輩と一緒に涙を流して喜び合えるお前も尊敬するよ」

「神坂さん、これ気持ちいいですね」

「本当だな。今度、石崎とやってみようかな?」

「俺も雑賀とやってみます」

「でもさ、ちゃんとルールを説明してからやらないと、気持ち悪がられるだろうな!」


ひとりごと

他人を見る時は、美点凝視を意識するべきですね。

どんな人にも長所はあります。

もちろん、どんな人にも短所もあります。

森信三先生は、長所に没入せよ、と言っています。

長所と短所を合算して客観的な評価を下しても、人間関係は良くはなりませんので、美点だけを視るという意識はとても重要なことですね。


【原文】
凡そ古今の人を評論するには、是非せざるを得ず。然れども、宜しく其の長処を挙げ以て其の短処を形わすべし。又十中の七は是を掲げ、十中の三は非を黜(しりぞ)くるも、亦忠厚なり。〔『言志後録』第249章〕

【意訳】
だいたい古今の人物を評価する際には、よしあしを判断せざるを得ない。しかしその場合、まず長所を取り上げた上で短所を取り上げるようにすべきである。また十のうち七までは長所を挙げ、十のうち三程度は短所を挙げておくことも、誠実で篤実なことである

【一日一斎物語的解釈】
他人の評価をする際は、まず長所を挙げることを意識するとよい。長所を優先してみつける意識を持つことで、円滑な人間関係を築くことができる。


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