今日の神坂課長は、読書会仲間の松本さん(フミさん)と食事をしているようです。

「フミさんが会社を経営する上で大切にしていたことは何ですか?」

「ゴッド、私はね、いつもシンプルに考えるようにしていたよ」

「シンプル?」

「そう、経営といっても要するに社員さんの幸せを一番に考えてあげればよい。そうすれば、社員さんがお客様のことを一番に考えてくれるはずだ、ってね」

「なるほど。顧客第一ではないのですね?」

「もちろんお客様がいなければ会社は成り立たないから、お客様は大切なんだけどね。すべてのお客様に私が接することができるわけではないよね。だから、お客様に接する社員さんの自己実現をサポートするつもりで経営をやってきたんだ」

「やっぱり、フミさんは凄いなぁ」

「ノー、アイム・ノット・グレイト! そのためには、社員さんの情をいかにマネジメントするかを大切にしてきたんだ」

「情ですか?」

「私が直接コミュニケーションをとるのは経営層のメンバーだからね。まずは彼らが何を考え、何を期待し、何をやりたいのかをよく察するように努力してきた。なるべく彼らが目指す道に進むことをサポートするつもりでね。そうすれば、彼らが課長に、課長がメンバーに同じことをしてくれるはずだから」

「そこは楽天的に考えるんですね?」

「そう、常に性善説に立って、楽天的に考えてきた。それで大きく道を踏み誤ることはなかったよ」

「メンバーの自己実現かぁ・・・」

「そのためには、しっかりと対話をするしかないよ。今流行りの1on1ってやつかな?」

「最近、書店に行くとやたら目にします」

「ただ、いざ面談をしてみると、考えが浅はかだったり、何も考えてない社員さんがいたりして、がっかりしたり、腹が立つこともあるよね?」

「そうなんですよ! そういうことを問いかけても、最近の若い奴は何も考えていないんです!!」

「イエース。でもねぇ、そこでキレたらダメなんだ。根気強く質問を投げかけながら対話していく必要がある。そうすれば少しずつ育ってくれるから」

「そこの我慢がなかなかできないんですよ。『お前はバカか!』って怒鳴ってしまったり・・・」

「ミー・トゥー。私もかつてはそうだった。そこが自分の心の修行どころなんだよ。自分の心を修めなければ、他人の情を修めることは不可能だからね!」

「たしかに、修行ですよね。荒行に近い!」

「ははは。それでもやらないとね。ゴッド、励んでくださいな」

「まずは己の心磨きからか。フミさん、ありがとうございます!」


ひとりごと

人の上に立って、人を治めたいと思うなら、まずは自分自身の心を磨くことが先です。

人の上に立ってから慌てるのではなく、若いうちから自分磨きをしておくことが大切です。

そのうえで、メンバーの情をいかに治めていくかを考えていくことがマネジメントの要諦のようです。

メンバーはそれぞれ違った個性をもっています。

1 on 1などの手法も活用し、メンバー一人ひとりに対してオーダーメードの育成計画を作り上げていかなければなりません。


【原文】
学を為すの緊要は、心の一字に在り。心を把りて以て心を治む。之を聖学と謂う。政を為すの著眼(ちゃくがん)は情の一字に在り。情に循い以て情を治む。之を王道と謂う。王道・聖学二に非ず。〔『言志晩録』第1章〕

【意訳】
学問をする上で最も大切なものは、心の一字にある。自分の心をしっかりと把握して、心を修養する。これを聖人の学(儒教)という。政治を行う上で最も着目しなければならないのは、情の一字である。人情の機微にしたがって人の情を治めていく。これを王道という。王道も聖人の学もその実はひとつであって二つのものではない

【一日一斎物語的解釈】
自己修養において大切にすべきは「心」であり、マネジメントを行う上で大切にすべきは「情」である。心を治め、情を治めることができれば、人の上に立っても大過なく過ごすことができる。


ohenro