今日の神坂課長は、相原会長の部屋にいるようです。

「会長は別に毎日会社に来なくても良いんですよね?」

「うん、平君からは役員会と期初・期末の会議以外は不定期で構わないと言われているよ」

「その割にはほぼ毎日出社されているような気がしますけど・・・」

「会社が好きだからね。他に趣味といえば、悪い部下にそそのかされて始めたギャンブルくらいでさ」

「人聞きの悪いこと言わないでくださいよ! 元はといえば、会長が『競馬教えてって私のところに来たんじゃないですか!」

「そうだっけ。最近、物忘れが激しくてね」

「都合の悪いところだけボケないでくださいよ!!」

「相変わらず神坂君はストレートだねぇ。まだまだ球速は150km/hくらい出ている感じだ!」

「し、失礼しました。つい口が滑りました。ははは」

「同世代の仲間の中にはすっかり老け込んじゃっている連中も多くてね。僕は嫌なんだよね。出来る限り毎日を溌剌として生きていたいんだ。幸い、こうやって働ける場所があるんだしね」

「凄いなぁ。私ならリタイアして、会長くらいお金があったら悠々自適で暮らすと思います」

「悠々自適で毎日ギャンブルじゃないの?」

「ちょっと前ならそうですけど、いまは読書という立派な趣味が加わりましたから、大丈夫です!」

「それは素晴らしい!! そういえば、営業の世界も変わってきたらしいね。すでに欧米では、インサイド・セールスが営業マン全体の40%を占めるらしいじゃない」

「なんですか、インサイド・セールスって?」

「内勤営業だよ。WEB会議システムを使って、ネットで営業をするのをそう呼ぶらしいよ」

「お客様のところに直接行かないんですか!!」

「会社によるらしい。インサイド・セールスであたりをつけて、感触の良いお客様にはフィールド・セールスが訪問するという所が多いみたいだね。ただ、最初から最後までインサイドで簡潔する会社もあるらしいよ。IT系の会社に多いみたいだけどね」

「そうでしょうね。ドクターと面会せずに、医療機器が売れるとは思えません。それにデモも必要ですしね」

「うん。ただ、すでに日本の医療機器メーカーさんも検討は始めているらしいよ。そうなると我々ディーラーは中抜きされてしまうかも知れないから、しっかりと対策を考えておくべきじゃないのかなぁ」

「たしかに顧客情報はメーカーさんの方が集めやすいですしね。ちょっと心配になってきました。それにしても、会長、凄いですね。そんな新しい知識をどこで仕入れるんですか?」

「会社に来て、皆と話していて情報を得る場合もあるし、DMを開いてみて、面白そうなセミナーがあったら行ってみるんだよ」

「さすがだなぁ。そういう風に常に新しいことを取り入れようとされているから、会長は若々しいんでしょうね!」

「神坂君、お世辞は下手だね!」

「か、会長!!」


ひとりごと

小生の周囲にいる七十歳を超えた方々の中にも、常に若い人と接し、新しい知識や技術を学んで、若々しく活き活きとされている方が多々いらっしゃいます。

一斎先生は、「老いて学べば則ち死して朽ちず」と言っています。

死して朽ちずとは、死んだ後もその名が残るということでしょう。

まだ壮年の小生としては、その方たちの背中を追いかける意味でも、学び続けなければいけません。


【原文】
曾晳は齢老ゆ。宜しく老友を求むべし。卻って冠童を求め、幽寂を賞せずして、卻って豔陽(えんよう)を賞す。既に浴し且つ風するも、亦老者の事に似ず。此等の処、須らく善く狂者の心体を討(たず)ね出すべし。〔『言志晩録』第3章〕

【意訳】
曾晳は老齢(四十歳強)に達していた。それゆえ本来なら老友を求めるべきところを、友に若者を求め、ひっそりとした静けさを愛さずに、はなやかな晩春の時節を愛した。ゆあみして夕涼みをするのも、また老人のすることではない。こうしたことから、曾晳には狂者の心(進取の気性)があることを探求せねばならない

【一日一斎物語的解釈】
組織の上に立った後も、常に若い人と交流し、新しい技術や知識を習得する意欲を持ちたいものだ。


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