今日の神坂課長は、定時後、デスクの上に本を積み上げて読書中のようです。

「課長、また競馬の勉強ですか?」

石崎君が興味を示したようです。

「こら、クソガキ! 誰が競馬の勉強やねん! 競馬なんてものは感性のみで勝負するもんだ」

「その割りに外れていると聞いてますけど・・・」

「少年、それを言っちゃおしまいよ。俺はただJRAバンクに貯金しているだけだ」

「JAバンクみたいな言い方してますけど、それは貯金じゃなくて、投機じゃないですか?」

「なるほどな、そうとも言うな」

「1on1って何ですか?」

「今流行りのマネジメント手法のひとつだ。昨日、大累に教えてもらったから、さっそく本屋で何冊か買ってきたんだ」

「その行動力は流石ですね」

「感即動だよ。感じたらすぐに動く。これが人生を悔いなく生きる秘訣だな!」

「(マジ、カッコいい)」

「え? 何か言ったか?

「い、いえ、なんでもないです。それって、私たちのやることも増えるんですか?」

「毎週30分の面談をやることになるから、お互いにその時間を確保する必要があるな」

「えー、ちょっと面倒ですね」

「少年、感即動だと言っただろう。まずはやってみる。それから修正すべきことは修正して、継続すべきか止めるべきかを考えればいい」

「流行りものに飛びつかない方が良くないですか?」

「そういう考え方もひとつだが、ネガティブだよな。俺は一旦飛びついて、その後取捨選択したい」

「なるほど」

「1on1を実施する目的は、部下の中長期的な育成とエンゲージメントの構築にあるんだ」

「エンゲージメントって何ですか?」

「日本語で適切な言葉がないんだけど、愛着とか絆とか良好な関係みたいな意味だ。もちろん、会社に対するメンバーのエンゲージメントを高めるということだよ」

「それをやると会社が好きになるということですか?」

「簡単に言えばそうだな。ただし、うまく出来ればだ。これは、上司である我々がどれだけ腹に落とせるかが重要なんだ。1on1の主役は部下であるお前たちだからな」

「おー、それは大変ですね。私たちは課長との個人面談を陰で『ワンマンショー』って呼んでいますから」

「お前、さらっと人を凹ますことを言うなよ。なんだか一気に自信がなくなってきたな」


ひとりごと

常に心身を健全に保っていれば、感じるままに行動しても首尾よくいくものだ、と一斎先生は言っているのでしょう。

ところが、人間はなにごとにも経験を積むことによって、自分なりの既成概念を積み上げてしまいます。

それが、迅速な判断を鈍らせる原因となります。

虚心坦懐で感即動。

これが人生を悔いなく生きる王道ではないでしょうか?


【原文】
胸次虚明なれば、感応神速なり。〔『言志晩録』第5章〕

【意訳】
心の中が澄みきっておれば、なにごとに感応するにも神のごとく迅速である

【一日一斎物語的解釈】
常に虚心坦懐を心掛けていれば、すぐに行動することができる。


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