今日の神坂課長は、クレーム案件の相談で佐藤部長の部屋にいるようです。

「というわけで、とりあえず収拾の方向にはいきそうですが、次回の更新の際に、また価格で絞られるのは避けられなくなりましたね」

「ははは。あそこの事務長さんはどっちにしても価格については一筋縄ではいかなでしょう」

「はい、そのとりですが、大きな武器を与えてしまったようなもので・・・」

「たしかにそうだね」

「まったく、やってくれますよ、石崎のやつ!」

「彼はまだ2年目だからね。こういう経験を積ませることが重要なんだよ。人間の成長を決める要素は、仕事の経験が7割、他者が2割、研修や書籍が1割だそうだからね。経験させれば成長するよ」

「なるほど。それにしても、佐藤部長はいつも冷静沈着ですよね」

「そうかな? それなりにはマズイなぁとは思っているけど」

「全然、そんな風に見えないですよ! 本当の学びをしている人は違うなぁ」

「まがりなりにも古典を勉強してきたから、意識だけはしているけどね」

「どんなことを意識しているのですか?」

「一斎先生の言葉を実践しているんだ。『心は平なるを要す。意は易なるを要す』。つまり、
心は平静に、気持ちはゆったりと、ということだね」

「たしかに、それは大事ですよね。自分の心に余裕がないと、ついメンバーにきつく当たってしまいますし、気分がゆったしていないと、正しい直観が働かないですよね」

「そのとおり! さすがは、古典を学んでいる人だね!」

「勘弁してください。部長に言われると嫌味にしか聞こえません」

「ははは。そこだよそこ。そういう風に捉えてしまうこと自体、神坂君の心に余裕がない証拠じゃないの?」

「あー、まったくです!」


ひとりごと

メンバーは、リーダーの精神状態を非常に細かく観察しているものです。

「今は相談に行かない方がいい」とか「今ならプライベートな話もできそうだな」などと、自分なりに分析をしているものです。

しかし、こういう状態ではいわゆる「心理的安全性」を高めることはできません。(心理的安全性については、どこかで物語として取り上げます)

まずは、いつでもどこでも話しやすいリーダーであるべきです。

そのためには、心を磨き、いつも安定した穏やかなキャラクターを作り上げる必要があるのでしょう。


【原文】
心は平なるを要す。平なれば則ち定まる。気は易(い)なるを要す。易なれば則ち直し。〔『言志晩録』第6章〕

【意訳】
心は平静さを保つべきである。心が平静であれば安定するはずである。気分は穏やかさを保つべきである。心が穏やかであれば素直になれるはずである

【一日一斎物語的解釈】
心に平静さを保てば、仕事も生活も安定する。気分を穏やかに保てば、素直に行動できる。


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