今日の神坂課長は、石崎君からのSOSを受けて、N市内の一般病院に来たようです。

「課長、ありがとうございました。なんとか先生のお怒りも解けたようで・・・」

「まだわからないぞ。上司の顔に免じて許すとは言って頂いたが、これからお前は試されるぞ!」

「はい、覚悟しています」

「いいね。今まで以上にここには足繁く通えよ」

「はい」

「おい、それにしてもどこまで歩かせるんだよ」

「第三駐車場の一番奥に車を停めたので、ここから7~8分かかります」

「このクソ暑いのに、なんでそんな遠くに停めたんだよ!」

「え、だって課長、前に言ってたじゃないですか! 入り口からなるべく遠くの駐車場に停めているって。私もそれから実践しているんです」

「ものごとには程度ってもんがあるんだよ。お前、見てみろよ。この第二駐車場だってガラガラじゃないか!」

「なんだよ、課長がそうしているっていうから真似したのに・・・」

「えっ、何か言ったか?」

「いえ、何でもないです!」

「なんでお前が機嫌悪くなるんだよ。今日は、お前のクレームのレスキューに来たんだぞ!」

「あ、そうでした。すっかり忘れていました!」

「そういう大事なところ、絶対に忘れるなよな!!」

「すみません」

「でも、まあ、あれだな。俺のやっていることを真似してくれているというのは嬉しいよ」

「えっ? あー、純粋に良いことだなと思いましたので」

「うん。病院では、なるべく入り口から遠くに車を停めるということは、絶対に良いことだ。これからも続けたほうがいいよ。ただなぁ」

「なんですか?」

「俺は一番遠くに停めろとは言ってないよな?」

「そう言われれば、たしかにそうです」

「今回の件はたいした問題ではないが、上司やお客様からのアドバイスについては、しっかりと理解しろよ。中途半端な理解で突っ走ると、求められたことと真逆のことをやりかねないからな。確認すべきことは確認して、しっかり腹に落としてから行動するんだ」

「はい。たしかに私はすぐ暴走するところがありますね」

「ははは。お前の暴走なんて、俺の若い頃の暴走に比べれば可愛いもんさ。俺のは暴走じゃなくて暴動だったな」

「それ、ぜんぜん自慢にならないと思いますけど・・・」


ひとりごと

せっかくの上司や先輩のアドバイスを中途半端に理解して失敗したというケースを誰しも経験しているのではないでしょうか?

小生など、『論語』や『言志四録』を通して、孔子や一斎先生から教えを頂いていながら、それを人生に活かせず、失敗の連続です。

もっともっと教えを腹に落とし、学びを深めて、そして実践するということに意識を向けないといけません!!


【原文】
周子・程伯子は道学の祖たり。然るに門人或いは誤りて広視豁歩(かっぽ)の風を成せしかば、南軒嘗て之を病む。朱子因て矯むるに、逐次漸進の説を以てす。然り而して後人又誤りて支離破砕を成すは、恐らく朱子の本意と乖牾(かいご)せん。省す可し。〔『言志晩録』第33条〕

【意訳】
周濂渓と程明道とは、道学(宋代の儒学)の始祖である。しかし、弟子の中にはその真意を誤解して、悟ったつもりで実地の学問をおそろかにする雰囲気を醸し出したので、張栻(南軒)がこれを心配した。朱子はこれを矯正するために、少しずつ前に進む説を立てた。しかしこれをも後世の人々は理解せずに、字句に拘泥してしまったのは、恐らく朱子の本意からは大きく背き逆らったものであろう。よく反省すべきである

【一日一斎物語的解釈】
弟子は師の教えをしっかりと理解すべきである。中途半端な理解で行動すれば、かえって師の顔に泥を塗ることにもなりかねない。


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