今日の神坂課長は、歴史好きが偉人を語る会に参加しているようです。

本日の語り部、市川さんが休憩をはさんで80分間、本日の偉人・蘇我馬子について、聴く人を飽きさせることなく語り終えました。

その後は、午後の史跡巡りとなりますが、その前に参加者でランチを食べているようです。

「いやー、今回初めて参加させてもらったのですが、市川さんの知識は凄いですね。それにまとめ方も上手で、あっという間の80分でしたよ」
神坂課長です。

「ありがとうございます。最初は、緊張しまくって大変だったのですが、何度かやらせてもらううちに病みつきになってきました」

「この会を始めるきっかけは、私と一緒に会を主催している中田さんが、家康検定で99点をとったということを聴いて、そんな素晴らしい知識を独り占めしているのは惜しい。ぜひ、人前で語るべきだと言ったところから始まったのです」
会の主催者の徳川さんです。

「私も最初は丁重にお断りしたのですが、徳川さんの圧力に押されてやることになりましてね。でも、やることが決まってからも、何度『やっぱりやめますと電話しようか悩んだくらいです。(笑)」

「そう言っている中田さんですが、今では堂々と話をされますし、何より午後の史跡巡りは毎回すべて中田さんのコーディネートで開催されていますからね」

「そうなんです。今や私のライフワークになりました」

「人前で語るためには、それなりの準備が必要です。今までの知識を整理する良い機会にもなりますし、なにより、人前で語る緊張感というのは誰でも味わえるものではありません。しかし、人間は時には心の精気を思い切り動かすことが大事でして、緊張を持って語るというのは、まさに心の精気を動かすのには最適なのです

「なるほどなぁ。たしかに準備なしで80分は語れませんよね。それに準備をしっかりしていなければ、緊張感に負けてしまうでしょうしね」

「神坂さん、そうなんです。でもね、しっかり準備をして何とか語り終えた時の達成感は、なにものにも代えがたいものがあります。あの達成感と脱力感を味わいたくて、この会を続けているようなものです」

「中田さん、わかる気がします」

「人間は、時には心の精気を思い切り動かし、また時には瞑想などによって心の精気を鎮めるということを繰り返す必要があるのです。それでこそ心は健全でいられるのです。両端の極まで触れる経験をしているから、日ごろは平穏でいられるものなのです」

「徳川さんはプロデューサーみたいですね」

「ははは。それは、褒めすぎです。ただ、中田さんや市川さんに人前で語る喜びを知ってもらえたことは、本当に良かったと思っていますよ。これからもそういう人を少しずつ増やしていきたいのです」

「じゃあ、私もいつか語らせてもらいますよ。しかし、その前にしっかり勉強しないと!」

「神坂さん、期待してお待ちしています。さぁ、それでは午後の史跡巡りに出かけましょう。今日は聖徳太子にゆかりの寺院を訪れる予定です」


ひとりごと

読売ジャイアンツ終身名誉監督の長嶋茂雄氏は、かつて「プレッシャーを楽しむ」という名言を残しています。

何か新しいことに挑戦する時には多かれ少なかれプレッシャーを感じるものです。

そして、そのプレッシャーのさなかには、もうやめてしまおうかと悩むこともあるでしょう。

しかし、それを乗り越えて何かを達成すれば、大きな達成感や充実感を得ることができます。

これこそ、「心の精気を流動させる」ということでしょう。

ただし、流動させっ放しでは心が疲れてしまいます。

あるときは瞑想などによって、一人静かに考える時間をもつことで、心の精気を鎮めることも必要だと一斎先生は言っています。

こうして両極端を味わうことで、はじめて真ん中がどこにあるかがわかり、平生は心を落ち着けて生活ができるようになるのでしょう。


【原文】
余の義理を沈思する時は、胸中寧静にして気体収斂するを覚え、経書を講説する時は、胸中醒快(せいかい)にして気体流動するを覚ゆ。〔『言志晩録』第41条〕

【意訳】
私が正しい道について沈思黙考するときは、胸の中が安らかに落ち着いて精気が収縮するように感じ、経書を講義する場合には、胸の中が明晰で爽やかになり精気が流動するのを感じる

【一日一斎物語的解釈】
心の精気というものは、時には瞑想をして鎮め、時には人前で語るなどして活発に動かすことを意識するとよい。


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