営業2課の新人、梅田君が凹んでいるようです。

「どうした、梅田。いつもの元気がないじゃないか?」
神坂課長が声をかけたようです。

「昨日、先生方を前にしてプレゼンをしたのですが、全然興味を惹けなかったんです。しっかり準備もして、石崎さんにロープレもやってもらったのですが・・・」

「良い経験をしているじゃないか。初めからうまくいったら調子に乗るから、それくらいがちょうど良いんだよ」

「もっとうまく話せるようになりたいです。課長、どういう勉強をしたら良いのでしょうか?」

「そうだな。その製品が使われる場面をたくさん見て、何が一番お役立ちできるポイントなのかを学ぶのが一番だろうな」

「課長、私の話を聞いていましたか? 人前で上手に話しができるようになるために、何をしたら良いかを聞いたのですが・・・」

「だから! 大事なのは自分がプレゼンする商品に惚れ込むことなんだよ。これなら絶対にお役に立てると思う気持ちが一番重要なんだよ」

「意味がわかりません」

「いいか、梅田。結局、プレゼンとうものは何を言うかより誰がいうかが重要なんだ。スピーチは上手に越したことはないが、それ以上に重要なのがプレゼンする人間、あるいはその人間の心なんだよ」

「心・・・ですか?」

「そう。先生方だってお前が若いことくらい、見ればわかるだろう。正直に言って、舐められているという部分はあるよ。でもな、そこでお前がその商品を本当に大好きで、間違いなくお役立ちができるので是非使って欲しい、という熱い想いを全面に押し出してプレゼンをすれば、空気が変わるんだよ」

「そういうものですか?」

「俺の経験から言えば、そういうものだ! そういうプレゼンを繰り返していけば、いつしかお前がプレゼンをするというだけで、初めから興味をもって聞いてくれる先生が増えてくるはずだ」

「熱い営業マンはウザがられませんか?」

「全員から評価をもらおうとするな。同じような熱い想いをもった先生の心に届くプレゼンをすればいいんだ。俺はずっとそうしてきた。もちろん、ウザがられることもしょっちゅうあっ
たよ。でもな、結局は、医療を変えていく先生というのは、熱い先生なんだよ!」

「わかりました。商品のセールスポイントを徹底的に調べてみます!」

「それがわかったら、もう一度俺のところに来い。そのときに、プレゼンのコツも教えてやるよ」

「なんだぁ、課長。プレゼンから話をそらしたからプレゼンは苦手なのかと思っていましたよ。ちゃんとプレゼンのコツも教えてくれるんですね?」

「お前なぁ・・・」


ひとりごと

「何を言うかより、誰が言うかが重要だ」、という言葉は良く聞く言葉ですね。

それなら無名の人間は駄目なのか?

決して、そんなことはないはずです。

要するに、どれだけ語る内容に想いが籠められているかが重要なのではないでしょうか。

もちろん、一斎先生が言うように、人間力を高めて自然に聴衆の心をつかむオーラを身に纏うことができるなら、それが理想ではありますが・・・。


【原文】
講説は其の人に在りて、口弁に在らず。「君子は義に喩り、小人は利に喩る」が如きは、常人此れを説けば、嚼蠟(しゃくろう)味無きも、象山此を説けば、則ち聴者をして愧汗(きかん)せしむ。視て易事(いじ)と為す勿れ。〔『言志晩録』第43条〕

【意訳】
講義というものは講義する人がどのような人物かということが重要であって、弁舌の上手下手にあるのではない。『論語』に「君子は義に喩り、小人は利に喩る」とあるが、これを一般の人が説けば、蝋燭を噛むようなもので味気ないものになる。ところが陸象山が説けば、聴く者は脂汗を流すことになる。講義を行うことは容易なことでないことを知らねばならない

【一日一斎物語的解釈】
人に何かを説く時は、何を言うかより誰が言うかが重要であることが多い。本当に理解させたいと思うなら、人物を磨くしかないのだ。


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