今日の神坂課長は、ブックランド・バディーズにいるようです。(昨日のつづき)

「私は説教臭い本は苦手です。ああしなさい、こうしなさいと書かれているとなんだか窮屈に感じるんですよ」

「じゃあ、するめさんは経書とかは苦手ですか?」

「神坂さん、正直に言うとそうなんです。『論語』は面白いと思いますが、『孟子』は苦手です」

「ああ、わかる気がします。孔子という人には説教臭いところがないですよね。孟子はやや強引に言いくるめようとするところがあります」

「さすがは、佐藤さん。私もそう感じてしまうんです。『論語』の中の孔子と弟子達とのやり取りは、すごく人間臭いし、読んでいて心に映像が浮かんできます」

「わかるなぁ。私は子路が大好きです。ちょっと無鉄砲なんだけど、すごく人間臭い。孔子のことが大好きで、時には孔子に説教をしてしまう。そんな子路を孔子も心から愛していますよね」

「そういえば、神坂君は子路に似ているかもね」

「そうですか? 私はあんなに無鉄砲ではないと思いますけど・・・」

「・・・」

「ははは。子路や子貢と孔子のやり取りは本当に楽しい。神坂さん、僕はね、著者が人に知識を誇示するために書かれた本はお店に置かないようにしています

「へぇ、ではどういう本を薦めているのですか?」

「著者が書きたくて仕方がないことを自らが楽しんで書いている、ということを感じられる本が好きです。そういう本に出会うと大量に仕入れてお店に置くんです」

「それ、わかる気がします。営業の世界でも、営業マンが本当にその商品が好きだということが伝わると、お客様はイエスをくれます。どんなに上手に商品を説明しても、そういう気持ちがないと、かえって説得しようとする意図が伝わって、お客様はNOを出すのです」

「面白い! まったくそれと同じですね」

「神坂君は昔からそうでした。その商品が本当にお客様のお役に立つと思ったときしか商品を薦めない。それじゃ売上計画を達成できないから、もう少し売る努力をしてくれと何度も言うのですが、『私は売上計画を達成するために営業をしているわけではありません』と言って売ってくれなかったもんね」

「そ、それは若い頃の話じゃないですか・・・。今は会社の計画達成とお客様へのお役立ちを両立させるために、馬鹿な頭をフル回転しているんですから!」

「若い頃? 少なくとも3年くらい前まではそうだった気がするけどなぁ・・・」

「ははは。私には佐藤さんと神坂さんの会話が、孔子と子路の会話に見えてきましたよ」


ひとりごと

著者が溢れる想いを書かずにはいられないという感じで書いた本には、人の心を揺さぶるものがありますね。

そんな本に出会うと、読む側も嬉しくなります。

これからも本との偶然の出会いを楽しみに、足繁く書店に通うつもりです。


【原文】
著書は只だ自ら怡悦(いえつ)するを要し、初めより人に示すの念有るを要せず。〔『言志晩録』第49条〕

【意訳】
書物を著述するのは、ただ自ら悦び楽しめば良いのであって、人に誇示するという思いを抱いてはいけない

【一日一斎物語的解釈】
書籍を選ぶ際は、著者が書きたいことを楽しみながら書いているような本を選べばよい。


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