今日の神坂課長は、営業部の佐藤部長、大累課長と夕食を共にしているようです。

「マジで? 大累、お前すごいな。音楽を聴きながら本が読めるのか?」

「好きな音楽を聴きながら本を読む方が、スッと頭に入ってきますよ」

「本当かよ? 俺にとって音楽っていうのは、歌うためにあるものだからなぁ。好きな歌がかかると一緒に歌いたくなるんだよな」

「それじゃ本は読めませんね。(笑)」

「絶対、ムリ!(笑)」

「ははは、一斎先生はね、読書と静坐を一緒にやってみたら効果があったと言っているよ」

「へぇ、一斎先生も効率を求めていたんですね」
神坂課長が感心しています。

「そうみたいだね。朱子は『半日静坐、半日読書』を実践したと言われているけれど、別に分けて実施する必要はないんじゃないか、と言っている」

「なんだか意外ですね。そういうものは別々に心を込めてやるべきだ、と言われる気がしますけどね」

「一斎先生はとても柔軟な人だからね。朱子学と陽明学をしっかり勉強して、実際に講義もしているしね」

「神坂さん、この忙しい現代において、二つのことを同時進行で実行するということは大事なことですよ」

「まあ、そうかもな。でも、なんでもかんでも効率効率というのもどうかと思うよ」

「たしかに神坂君の言うことも一理あるね。あまりにも便利さを求めすぎると、人間が退化してしまう恐れもあるね」

「最近、台風や地震といった天災が続いているじゃないですか。そういう災害で停電になってしまうと、オール電化のマンションは何もできなくなるらしいですよ」

「マジですか? ウチはオール電化です」

「ガスコンロとかローソクとか、アナログなものをしっかり準備しておいた方がいいぞ!」

「そういえばこの前の台風のときは、カミさんが風呂に水を溜めていました」

「さすがはしっかりもののアケミだな」

「人のカミさんを勝手に呼び捨てにしないでください!」

「だってお前、いちいち『さん』をつけるのは効率が悪いじゃないか!」

「神坂さん、そういうことじゃないと思いますけど・・・」


ひとりごと

人の上に立っている人たちは皆さんそうだと思いますが、複数の仕事を同時並行で走らせなければならないのが現代のビジネスですよね。

その際、やはり効率を意識することはとても大切なことです。

誰にとっても時間は平等に与えられており、どんなにお金を支払っても時間を買うことはできません。

効率を求めて仕事をしましょう。

ただし、効率と便利さは別物です。

便利さを求めすぎることは、もしかしたら人類の衰退を招くことになるのかも知れません・・・。


【原文】
吾れ読書静坐を把って打して一片と做さんと欲し、因て自ら之を試みぬ。経を読む時は、寧静端坐し、巻を披(ひら)きて目を渉(しょう)し、一事一理、必ず之を心に求むるに、乃ち能く之を黙契し、恍として自得する有り。此の際真に是れ無欲にして、即ち是れ主静なり。必ずしも一日各半の工夫を做さず。〔『言志晩録』第74条〕

【意訳】
私は読書と静坐を同時に実施してみようと試みた。経書を読むときは、安静にして静坐し、本を開いて目を走らせ、ひとつの事柄、ひとつの道理を自らの心に求めていくと、無言のうちに書物と心がピタリと融合して、いつの間にか心に会得するものがあった。このときは本当に無心無欲の状態であり、これを主静というのだ。必ずしも朱子が言うように「半日静坐、半日読書」と分けて実施する必要性はない

【一日一斎物語的解釈】
読書と静坐のように関連する事柄を効率的に実施することは悪いことではない。限られた時間の中で、多くの仕事をこなさなければならない現代においては、効率を求める意識を持つことは大切なことである。


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