今日の神坂課長は、総務部の西村部長とランチに出かけたようです。
「西村さん、ソフトバンク優勝おめでとうございます」
「おっ、なんだ、素直に敗北を認めるのか?」
「力の差は歴然でしたからね。ただし、やはりリーグ2位からの日本一というのは納得はできないですよ!」
「ルール上問題ないからな」
「その通りです。ソフトバンクが育成選手を上手に育ててチームを作るなら、巨人はFAと外人で補強します。お金を使ってはいけないというルールもありませんから」
「たしかにな。しかし、モラル上はどうかな?」
「2位から日本一だって、空気読めよって感じですよ!」
「負け犬の遠吠えだな」
「そうですね。実際にソフトバンクは強かったですよ。何て言うのかな、天を味方につけているなって感じました」
「ほぉ、天を?」
「はい。すべての選手が働くときに働いて、すこしも無理をしていません。まるで天の意思を感じ、その意思のままに動くという感じですね」
「巨人は無理をしていた?」
「はい、故障明けの菅野を使ったり、経験不足の若手を使わざるを得なかったり、無理をしていました。もちろん先を見越しての戦いという面もあったでしょうが、やはり短期決戦ですから、一戦一戦に力を尽くさないとダメでしょうね」
「たしかにソフトバンクの選手は、常に戦況を読んで、どの場面でもベストの行動を自然に選択できていたな。それだけ普段からレギュラーだけでなく、控え選手もしっかりと練習し、状況判断を磨いていたんだろう」
「そうなんです。巨人は大事な場面でのエラーが目立ちました。それもすべて若手選手たちです。彼らにとっては辛いシリーズになりましたが、これを糧に来年は一皮むけた選手になって欲しいです」
「失敗からしか学べないこともあるからね」
「我が営業2課のメンバーにも、たくさん失敗から学んでもらいたいです」
「おお、神坂君も徐々に名将になりつつあるな」
「ありがとうございます。ただ、一つだけ言わせてください。工藤監督は決して名将ではないですよ!」
「なぜだい? 3年連続日本一だよ」
「考えてもみてください。あれだけの戦力が整っていて、2年続けてペナントレースでは2位ですよ。あの人は今のところ短期決戦に強い監督というだけで、まだまだ名将と呼ばれるレベルには達していませんよ」
「これまた負け犬の遠吠えだな。まあ、工藤監督も実際にそう思っているかもな」
「来年こそ、両チームがペナントを制して、真の日本一決定戦をやってもらいましょう!」
ひとりごと
勝負事においては、お互いに力が拮抗している場合、最後の最後は天を味方につけた方が勝つものです。
天を味方につけるとは、宇宙の摂理を体得し、それに逆らわない行動とをとるということでしょう。
本来、人間にはそうした知性や能力が備わっているのだ、と一斎先生は言います。
人事を尽くして天命を待つとは、やれるだけの努力をしたら、あとは宇宙の摂理に逆らわずに行動する、という意味なのかも知れません。
ところで、巨人とソフトバンクについては、準備段階で巨人はすでに負けていたように思います。
【原文】
天を以て感ずる者は、慮らざるの知なり。天を以て動く者は、学ばざるの能なり。〔『言志晩録』第83条〕
【訳文】
天の意志を感じるものは、考えずとも分かる知能である。天の意志を受けて動くものは、学ばずとも発揮できる能力である。
【所感】
人間に生まれつき備わっている知能や能力を活用すべきだ。

