今日の神坂課長は、N大学病院消化器内科教授室を訪れているようです。

「以上が当社からの内視鏡システム更新に関するご提案です。中村先生、いかがでしょうか?」

「うん、やはり今後の医療はAI無くしては進んでいかないんだろうね。そういう意味では、今回の提案は大変興味深いよ。神坂君、ありがとう」

「中村先生、AIと医師とはどうやって共存していくのでしょうか?」

「診断という意味では、AIを大いに活用するべきだろうね。もちろん内視鏡検査自体は我々医師が行うが、その後の画像診断については、AIの力を借りて、ある程度一次的な診断は任せていくことになるだろうね」

「やはりそうですか。若い先生よりはAIの診断の方が正しいということはあり得ることですね」

「そうだね。ただ、若い医師がAIに頼り過ぎて、画像を診断する目を養うことが疎かになることはとても怖いことだよ」

「なぜですか?」
  
「AIだって万能ではないからね。100%の確率で病変を診断できるわけではない。それにAIというのは、過去の膨大なデータから正解を拾ってくることには長けている。しかし、未来は予測できないんだよ。つまり、新たな病気が出てきたら、それを見つけることはできない」

「なるほど」

「人間は過去の知見から未来を予測することができる。つまり、画像をしっかり見る目を養っていれば、新たな病に気づくことができるはずだ」

「しかし、AIに診断を任せてしまうと、そうした知見を得ることができなくなるんですね?」

「そのとおりだよ。だから、我々医師はAIを上手に活用するべきであって、AIに使われてはいけないんだ」

「AI万能だと考えるのは危険なことなんですね?」

「AIは諸刃の剣だということだね。これはAIに限らず、薬もまたそうではあるけれどね」

「使い方を誤れば、かえって害となるということなんですね」

「うん、お互いAIに使われないように、しっかりと己の軸をもって仕事をしようじゃないか!」

「はい、大変勉強になりました」


ひとりごと

AIが多くの仕事を奪うと言われています。

しかし、AIは万能ではありません。

AIに頼り切ることは、諸刃の剣です。

私達人間は、AIと共存できる社会を創ることを忘れてはいけませんね。


【原文】
霊薬も用を誤れば則ち人を斃し、利剣も柄(へい)を倒(さかさま)にすれば則ち自ら傷(きずつ)く。学術も方(ほう)に乖(そむ)けば則ち自ら戕(そこな)い又人を賊(そこな)う。〔『言志晩録』第84条〕

【意訳】
よく効く薬も服用法を誤れば人を殺すことになる。切れ味鋭い刀も柄を逆さまに持てば自分を傷つける。同様に、学問も正しく活用しなければ己を損い人をも害することになる

【一日一斎物語的解釈】
何ごとも使い方を誤れば、かえって他人や己自身を傷つけることになる。


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