今日の神坂課長は、大累課長、新美課長と3人で、新美課長の100kmウォーク完歩を祝う宴を開催しているようです。
「まずは、完歩お疲れ様。今日は二人から新美に敬意を表して、ご馳走させてもらうよ」
「ありがとうございます。お二人の応援は本当に力になりましたよ」
「本当か? 神坂さんの応援はウザくなかったか?」
「やかましいわ。俺は心から応援していたんだ、ちゃんと通じたよな?」
「はい。すごく嬉しかったですよ」
「いや実はさ。あの80km地点の新美の顔を見た時は、こりゃヤバイんじゃないかと思ったよ。なあ、大累」
「うん、たしかに俺も思った。顔に悲壮感が漂っていたぜ」
「あの辺りは一番きつかったですね。昨年一昨年にはなかった苦しさでした」
「年齢的なものか?」
「いや、実は今年は例年より準備に時間を取れなかったのです」
「準備不足か。それは一番ダメだな」
「昨年までは、半年前から土日にはかなり歩いたのですが、今年は3カ月前くらいからでした。その差は大きいかったです」
「やはり、大きな仕事をするときほど、準備が大事だということだよな。誤魔化しがきかないからな」
「なあ、新美。神坂さんも身体を動かすべきだと思わないか?」
「そうですね。なんか、最近お腹がぷっくりしてきたんじゃないですか?」
「マジで? やばいな。しかし、100kmも歩くなんて俺には考えられないな。走るのも好きじゃないし・・・」
「ほら、言い訳が始まったぞ。準備不足も問題だが、そもそもできない理由を並べ立ててやらないのはもっとダメだよな?」
「なんだよ、お前ら。二人そろって俺を吊るし上げる気か?」
「神坂さん、運動というのは、人生を健康に生きるための最大の準備ですよ。その準備を怠れば、早く老いがきて、身体も動かなくなりますよ」
「新美、脅すなよ。わかってるよ。昨日の帰りにスポーツショップに行って、ウェアとか靴を物色してきたんだよ」
「おお、それで、買ったんですか?」
「いや・・・」
「なんだ、それ?」
ひとりごと
梅沢富美男さんのヒット曲『夢芝居』の歌詞に「稽古不足を幕は待たない」とあります。
準備不足を仕事は待ってくれません。
できる限りのことをして、あとは結果を天に委ねるという考え方で準備をしなければいけませんね。
準備で仕事は8割決まりますから。
【原文】
満を引いて度に中れば、発して空箭(くうせん)無し。人事宜しく射の如く然るべし。〔『言志晩録』第87条〕
【意訳】
弓を目一杯引き絞って的を射れば、矢が当たらないということはない。人生の出来事もこの射的と同じであって、よく考え、よく準備して行動すれば、失敗することはない。
【一日一斎物語的解釈】
考え得る限りの準備を尽せば、結果は自ずとついてくるものだ。

