「神坂、なくすべきは私心と私欲だなぁ」

「鈴木、そのとおりだ。これが無欲の勝利ってやつかな?」

「まだハーフが終わっただけだ、後半に必ず逆転するぞ」

「その発言がすでに私欲にまみれているんじゃないか?」

「たしかに。(笑)」

今日の神坂課長は、同期の人事課鈴木課長と平日にゴルフを楽しんでいるようです。

「やっぱり平日のゴルフ場は空いていていいよな。ただ、二人で周ってるから、この時間にビールを飲めないのが残念ではあるけど」

「飲んじゃえばいいじゃないか。俺は飲んじゃおうかな? どうせ帰る頃には抜けているだろう」

「神坂、それも私欲に負けてるといえるんじゃない?」

「おお、たしかにな。つい一杯と飲んでしまって、帰りに飲酒検問にでも引っかかったらアウトだな」

「ここは我慢してノンアルで乗り切ろう」

「私欲に克つのは大変だな」

「だから言っただろう」

「今度さ。飲み屋のねえちゃんとラウンドする予定なんだよ。その時に、『神坂さん、お上手。チュッ』なんてシーンを現実のものとするために、今日はしっかりプレーして本番に備えないとな」

「なんだよ、お前のくだらない夢物語の準備に付き合わされたってわけか?」

「まあ、そう言うな。ゴルフ自体は楽しいじゃないか!」

「しかし、お前のその妄想は、完全に私心だぞ。そういうことを考えたときは大体そうはならないものだ」

「鈴木、そんな偉そうなセリフは後半で俺に逆転してから言え!」

「くそっ、私欲だろうと私心だろうと、絶対お前にだけは負けたくない!!」


ひとりごと

他人の評価を期待するのは私心、自ら何かを手に入れようとするのが私欲です。

そうならないように無欲を目指せと言いますが、実際に無欲になるのはかなり大変なことです。

だからこそ、スポーツにおいては、勝つことに意識を集中すのではなく、目の前の一球に集中することを心掛けるのでしょう。

仕事においても、今やるべきことに意識を集中する。その連続が結果として成果につながるのです。


【原文】
我れ無ければ則ち其の身を獲ず。即ち是れ義なり。物無ければ則ち其の人を見ず。即ち是れ勇なり。〔『言志晩録』第98条〕

【意訳】
私心がなければ、それは自分の身を見ずして我執を取り去ることになる。これは即ち義(正しい道)である。物欲の念がなければ、外物に煩わされることはない。これは即ち勇気へとつながる

【一日一斎物語的解釈】
私心と私欲がなければ、真の勇気をもって正しい道を歩むことができる。


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