今日の神坂課長は、同業他社Y社の井上さんと病院の駐車場で談笑しているようです。

「そういえば、神坂さん。B医科理科が内部崩壊しているって聞いてる?」

「ああ、その噂は聞いていますよ。社長派と専務派に分かれて血みどろの抗争劇を繰り広げているって」

「このままだと分裂必至かな。B社が衰退するのは、我々にとって悪い話ではないですけどね」

「でもさ、なんだか寂しくない? 同じ業界を長年にわたって盛り上げてきた会社が人間関係から崩壊するなんて、俺はすごく残念なんだよね」

「神坂さんらしいな。そんなこと言ってると御社こそ生き残れませんよ!」

「まあ、そうだろうけどね。社長と専務は社員さんのことを本気で考えているのかねぇ?」

「考えていないでしょう! 考えていたら、外に聞こえるほどのバトルを繰り広げないはずですからね」

「そうだよね。なぜ、もっと社員さんのことを考えてあげられないのかねぇ」

「あそこの社是は、『社員は宝』でしたよ」

「口だけかよ! たしか50名くらいはいるよね?」

「そのくらいでしょうね。この数年でK社がだいぶ引き抜きましたけどね。10名以上は採用したんじゃないかな? K社はしてやったりと思っているでしょうね」

「そういう思いなのかな? 同じ業界の仲間が困っているから手を差し伸べたということじゃないの?」

「表向きはそういうことを言っているようですが、K社がそんなこと考えるわけないでしょう。有力なメンバーを引き抜いて、B社に壊滅的な打撃を与えようというのが本音ですよ」

「寂しいね。同業同士で助け合いながら盛り上げていくという考え方はできないのかなぁ?」

「神坂さん、人が良すぎますよ。あの会社を選んだのは、そこの社員さんなんだから、ある程度は自己責任で解決するしかないでしょう」

「井上さんはドライだよなぁ。俺はそうは考えられないなぁ。何人かは知っている人もいるからね」

「ウチは静観するスタンスのようです」

「ウチも採用するのは難しいだろうな」

「まだ分裂が確定したわけでもないですから、様子を見ておきましょうよ」

「そうですね。でも、俺の部下が去っていくのを想像しただけで、ブルーな気分になりますよ」

「お互いにそうならないように、しっかり心をつかむしかないですね!」


ひとりごと

ライバルがいるからこそ頑張れる。

スポーツの世界ではよく聞く言葉です。

しかし、これはビジネスにおいても同じではないでしょうか?

正々堂々と戦ってライバルを倒すのは快感ですが、ライバルが自滅するのを見るのはさみしいものです。


【原文】
前徒戈(ほこ)を倒(さかさま)にし、後を攻めて以て北(に)ぐ。武王の心、此の時果たして何如。以て快と為すか。蓋し亦惻然(そくぜん)として痛み、或いは愧ずる有らん。〔『言志晩録』第102条〕

【意訳】
『書経』には「前徒戈(ほこ)を倒(さかさま)にし、後を攻めて以て北(に)ぐ(周の武王が殷の紂王と戦った際、紂王軍の前方部隊が反逆して後方部隊を攻撃したため、紂王軍は壊滅した)」とある。このときの武王の心境はどのようなものだったであろうか。快感を感じていたのか。私が思うのは、武王は憐れに思い胸を痛めたか、反逆の罪を犯したことを恥じていたのではなかろうか

【一日一斎物語的解釈】
ライバル企業が内部崩壊をすることを、喜ぶべきか、悲しむべきか。共に業界を盛り上げるという観点に立てば、やはり悲しいことではないだろうか。


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