今日の神坂課長は、営業部会議に参加しているようです。

営業1課の廣田さんが、今期の大口商談について報告したようです。

「廣田、敵はおそらくウチのメンテナンス付きリースを分断する戦術でくるだろう。その辺の守りは大丈夫なのか?」

「はい、神坂課長。そうさせないように、消耗品の年間使用契約を提案しています。これでうまく縛りたいと考えています」

「なるほどな。洗浄機の消毒液の数量契約をするパターンだな」

「はい。洗浄機をO社のものにしてもらえれば、メンテナンスリースのリース料金を値下げするというプランです」

「最近はO社もかなり価格を下げているから、以前の金額をスライドする形では、施設の理解は得られないだろうな。そういう意味ではよい提案かも知れない」

「用度課さんは、消耗品の年間契約には前向きなのか?」
大累課長からの質問です。

「そこが課題です。用度の森永課長は、前例がないから難しいと言っていました」

「どうするんだ?」

「現場の先生方や看護師さんのご協力を得るしかないと思っています」

「どうやって?」

「まず、過酢酸の消毒液の方が消毒効果が高く、かつ安全であることを理解していただくためにデモを実施します」

「良いものが導入されて、しかも機器購入のコストを下げられるという切り口で、現場を抱き込むんだな?」

「神坂課長、そのとおりです」

「ただ、あの施設は用度課と現場の関係はイマイチだぞ。あまり現場側の意見だけを押し通すと、かえって用度の心証を悪くするかもしれない」

「そうですねぇ。そこは気を付けます」

「Y社さんは、用度にはかなり強いからな。切り崩されないように、しっかりやってくれよ。佐藤部長、何かコメントはありますか?」

「そうだね。今回は守りのビジネスをどう展開するかということが議題に上がったと思うけど、逆にもしウチの仕組みを切り崩すなら、どういう戦い方を仕掛けるかも考えておくべきかもしれないよ」

「なるほど」

「そうすることで、より弱点が明確になり、より強固に守ることができるんじゃないかな」

「よし、では次に、もし我々がY社だったら、我々のプランのどこを突くかを検討してみよう!」


ひとりごと

お風呂にお湯を溜めようと、蛇口からお湯をいくら流しても、風呂の栓が外れていればお湯はたまりません。

営業において新規商品をPRするのは当然ですが、競争相手も虎視眈々と既存の販売品の切り替えを狙っています。

そのためには、自社の強みや弱みを見極め、敵の出方を想定して守りを固めることも、ビジネスにおいては極めて重要なことです。

攻撃は最大の防禦とばかりは言っていられません!


【原文】
攻法有れば必ず守法有り。大砲を禦(ふせ)ぐには、聞く、西蕃(せいばん)は鍛牛革(たんぎゅうかく)を用い、形は屋大(おくだい)なりと。須らく査すべし。〔『言志晩録』第109条〕

【意訳】
攻める戦法があれば、これに対して必ず守る戦法もある。私の聞く所では、大砲を防ぐために西洋では、鍛えた牛の革を使用し、それを家屋の大きさにしているとのことである。これに関しては詳しく調査してみる必要がある

【一日一斎物語的解釈】
営業戦術においても、攻めと守りのバランスは重要である。とくに守りを固めることについては、工夫を凝らすべきである。


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