今日の神坂課長は、とあるリーダーシップのセミナーに参加しているようです。

「管理とマネジメントは違います。管理というのは、部下を自分の思い通りに動かすことです」

「しかし、部下が快く動いているのか、不満を持ちながら動いているのかはわかりません」

「マネジメントは、部下が自分の意思で動いているようでいて、実は上司の期待どおりに動いてくれている状態をつくることです」

「このときの部下は不満を抱いていません。しかし、もしかしたら上司への感謝の気持ちもないかも知れません」

「部下が上司のマネジメントに対して感謝するかしないかは、部下の課題です。上司は結果的に期待する行動を引き出し、期待する成果を得ることができればそれで良いのです」

「これが天のマネジメントです。宇宙の摂理を理解し、人間力で人を動かす手法です」

「これに対して、管理は地のコントロールです。人心を掌握することができる人は、それを巧みに操り賞罰で人を管理するのです」

「短期的に組織をまとめて動かすには、地のコントロールでも良いでしょう。しかし、長く人を動かし続けるには天のマネジメントが必要になります」

セミナーを聞き終えた神坂課長は、帰りの電車の中で考え込んでいます。

「たしかに短期的に人を動かすのには、賞罰が良いんだろうな。ただ、それは長続きしないのか。そうだよな、ニンジンをぶら下げて走らせてしまうと、また次のニンジンがないと動かなくなるもんな」

「そういえば、佐藤部長はキャンペーンを打つのを嫌うよな。あの人はそういう麻薬のようなもので人を動かすことが危険なことをちゃんと知っているんだな」

「なにかというとキャンペーンを打ちたがるメーカーさんは、たしかに信用できないよな」

「やっぱり真のリーダーになるには、時間をかけて自分の徳を磨くしかないんだな。近道はない! とにかく目の前の仕事をひとつずつ処理しながら、天のマネジメントを実践できるように精進していくしかないな!」

ちょうど最寄り駅に到着したようです。

「あれ? あそこにいるのは佐藤部長とちさとママじゃないか? なんだよ、なんだよ。佐藤部長は部下の心だけでなく、ママの心もつかんでいるのかよ!」


ひとりごと

王道のマネジメントと覇道のマネジメントでは、どちらが良いのか?

ストーリーにもあるように、どうしても短期的に結果を求められる場合には、覇道が必要となるでしょう。

しかし、長く安定的に良い結果を得るには、王道のマネジメントを実践するしかないようです。

別の見方をすれば、覇道のマネジメントの基本は損得にあります。

一方、王道のマネジメントの基本は善悪にあります。

覇道が必ずしも悪いわけではありませんが、王道を意識しながら、覇道を上手に使うというマネジメントが現実的なようです。


【原文】
地道の秘を窃(ぬす)む者は、以て覇を語る可く、天道の蘊(うん)を極むる者は、以て王を言う可し。〔『言志晩録』第111条〕

【意訳】
地の道の秘訣を知る者は、覇道を語ることができ、天の道を知る者は、王道を語ることができる

【一日一斎物語的解釈】
人の心を理解できる人は、報奨と罰則で人を管理できる。宇宙の摂理を理解できる人は、徳と礼とで人をマネジメントできる。


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