今日の神坂課長は、同期の鈴木課長と一杯やっているようです。

「ふと考えたんだけど、お前と俺の出会いというのも不思議な出会いだったよな」

「入試の時にお前がトイレでハンカチを落としたまま出て行ったのを追いかけたのが出会いだったな」

「そうそう。そして大学に登校したら、鈴木が同じクラスに居たんだよな」

「お前と俺は性格も真反対だし、普通に出会っていたら、仲良くなったかどうかは疑問だな」

「たしかにな、俺たちは陰と陽の代表みたいな性格だからな」

「俺を根暗みたいに言うな! お前がノー天気なだけだ!」

「ははは。こういうところが逆にかみ合ったんだよな。すぐに仲良くなったもんな」

「陰と陽か。たしかに男と女、天と地、太陽と月。この世の中のものはすべて相対する相手がいるのかもな」

「好きな奴もいれば、嫌いな奴もいる。ところが、嫌いな奴からかえって学ぶこともある」

「相対するものすべてから何かを得ているというわけか」

「なんか、俺たち大人になったな」

「え?」

「だって、大学の頃の俺たちはこんな話をしたことがなかったじゃないか。酒の話か女の話かギャンブルの話のどれかだっただろう」

「お前と一緒にするな。俺はお前よりはだいぶ成績が良かったからな。その頃から本もたくさん読んでいたしな」

「じゃあ、俺が成長したということか。それに比べて、お前はそれほど成長していないんだな」

「神坂、そろそろ気づけよ。俺がどれだけお前に合わせて低レベルの会話に付き合ってやってきたかをな!」

「あらあら、お二人さん。ちょっと険悪なムードかしら?」
ちさとママが料理を運んできました。

「ママ、俺たちは出会った頃からこんな感じだよ。仲が良いのか悪いのか?」

「そう、幸か不幸か、大学を出ておさらばかと思ったら、会社まで同じだった!」

「そっか、喧嘩するほど仲が良いっていうもんね」

「ママも仲良さそうに歩いていたなぁ」
神坂課長がいやらしい目でママを見つめています。

「か、神坂君。な、なんのこと?」

「昨日の夕方、駅で見ちゃった」

「え、ほんと?」

「まさか二人が手をつないで歩いているとはねぇ」

「嘘! 手なんかつないでないもん!!」

「ママ、顔が真っ赤だよ」

「なんだよ、なんだよ。神坂、どういうことだよ。俺にも教えろ!」

「あーっ、神坂君、今日は私が御馳走するね!」

「鈴木、ゴメン。口止め料をもらってしまったから教えられない」

(ちさとママが動揺している理由については、前日1745日をご覧ください)


ひとりごと

支那で生まれた陰陽二元論では、すべてのモノは陰と陽という二つのエネルギーから成り立っていると説いています。

夜と昼、男と女、喜びと悲しみなどなど、たしかに相対する二つの要素が絡み合って、万物が創られているようにも思えます。

人の出会いもまた必然のようです。

お互いのもつ陰と陽のパワーがパートナーとなるべき人を引き付けるのかも知れません。

時には、自分にとって最悪の人が目前に現れることもありますが、得てしてそういう人から多くの学びを得ることがあります。

良い出会いも辛い出会いもすべてが必然であり、出会いには必ず何か大きな意味があるのでしょう。


【原文】
天地間の事物必ず対(たい)有り。相待って固し。嘉耦(かぐう)・怨耦(えんぐう)を問わず、資益を相為(そうい)す。此の理須らく商思(しょうし)すべし。〔『言志晩録』第112条〕

【意訳】
の世に存在する物事はすべて相対的である。相対応して堅固に存在している。相性の良し悪しに関係なく、互いに裨益するところ大である。この理をよくかんがえてみるべきだ

【一日一斎物語的解釈】
すべての縁は必然であり、大きな宇宙の摂理の中でお互いに利益を与え合って存在している。せっかく出会った縁に深く思いを致すべきである。


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