今日は営業部の同期三人組、石崎君・善久君・願海君が日帰りの旅行に出ているようです。

「へぇー、N市内からそれほど遠くないところにこんな良い場所があるんだねぇ。さすがはガンちゃんだね、なんでも知ってるよなぁ」

「ザキにそこまで喜んでもらえると嬉しいよ。あの島まで橋がつながっているから歩いてみよう」

三人は竹島と呼ばれている島まで歩いています。

「ザキは神坂課長を尊敬しているんだよな」

「な、なんだよ、ガンちゃん。いきなり何を言ってるんだよ」

「違うの?」

「うーん、尊敬というか、あの人の喜ぶ顔がみたいと思うようになってきた。そのために頑張ってる感じかな」

「マジで? ザキ、いつからそんな風に思ってたの?」
同じ課の善久君が驚いています。

「最近だよ。俺が起こしたクレームを解決してもらったりしているうちに、自然にそう思うようになった」

「へぇー、意外だな。いつもカミさまの悪口ばかり言ってるイメージがあったのに」

「好きな気持ちの裏返しじゃないのかな?」

「ちょっと、二人とも。まるで俺がカミさまに片思いみたいな言い方はやめてよ。それから、このことはカミさまには内緒だよ!」

「伝えたらどうなる?」

「決まってるじゃん。みんなに言いふらすよ。『こいつは俺を尊敬しているんだぞ』ってね。そんなの恥ずかしくていたたまれないよ」

「たしかに!(笑)」

「そういう上司に巡り合えたのは幸せだね。でも、上司を立てるというのは難しいよね。自分を捨てないといけない部分がある」

「ガンちゃん、どういうこと?」

「誰でも自分が可愛いからね。上司を立てようと思っていても、自分の評価を上げることや出世することを犠牲にはできないでしょう」

「それはそうだね。俺は無理だなぁ。ザキは?」

「え? うーん、俺はねぇ・・・。あの人なら自分を犠牲にできるかも?」

「マジで?!」
二人は声をそろえて驚いています。

「そこまで尊敬していたとは、驚きだなぁ。でも、たしかにさ、カミさまもザキのことは特に可愛がっている感じはあるな」

「ザキの気持ちが伝わっているんじゃない?」

「ゼンちゃん、あの人は部下の誰に対しても愛情を持っていると思うよ。ゼンちゃんに対してもさ」

「俺が感じていないだけか?」

「さて、島についたね。ここには、八百富神社がある。神様違いだけど、俺たちが出会えたことをしっかりお礼しようよ」


ひとりごと

小生は営業部門に異動して最初に出会った上司の方にずっと感謝の気持ちを抱き続けています。

品質保証部門から営業部門に移り、不安な気持ちだった小生に、「お前なら大丈夫だよ」と言われて自信を持つことができたことを、いまでも忘れません。

そんな人の心に勇気を与えるリーダーになりたいですよね。

そうすれば、きっとあたなの下にいるメンバーもあなたを立ててくれるはずです!


【原文】
王荊公(けいこう)の本意は、其の君を堯舜となすに在り。而も其の為す所皆功利に在れば、則ち群宵(ぐんしょう)旨を希(ねが)い、競いて利を以て進み、遂に一敗して終を保つ能わず。究(つい)に亦自ら取る。惜しむ可し。後の輔相(ほしょう)たる者宜しく鑑みるべき所なり。〔『言志晩録』第124条〕

【意訳】
宋の王安石の本心は、自分の君主を堯や舜のような立派な君子にしようとするところにあった。然し、その為す所は全て功名利欲にあったので、群小の人物達は彼に迎合し、互いに利得を争ったために、最後には失敗し、終わりをまっとうできなかった。これは自ら招いたことで惜しむべきことである。後世の大臣や宰相はよくこのことを鑑みておくべきである

【一日一斎物語的解釈】
部下として上司を立てることは意外と難しい。上司をしっかりサポートするには、自分自身の功名利欲を捨て、滅私奉公を心掛けなければならない。利欲にとらわれれば、上司も立たず、自らも立つことはできなくなる。


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