今日の神坂課長は、川井企画室長の部屋に居るようです。
「神坂、明日からのJSES(内視鏡外科学会)には参加するのか?」
「はい、部長の許可をもらったので、通しで参加してきます」
「良いことだな。我々はあまりオペ室での仕事はできていないが、将来的には取り組みたいフィールドだからな」
「はい。それに消化器内科の先生方にも、JSESでどんなことが話題になっていたかをお話することは有用です。意外と専門外の学会情報は知らないドクターが多いですから」
「なるほど、情報を武器にするわけだな」
「今のところ、直接活かせるのはそこだと思っています」
「業界全体に詳しくなることは非常に重要なことだ。それが柔軟な経営戦略の立案につながるからな」
「専門外の知識になるので、しっかり勉強してきます」
「向こうでドクターと会食する予定はないのか?」
「今回は外科系のドクターなので、予定はしていませんが、チャンスがあればそういう機会も作ります」
「積極的にやってくれ。ただし、官公立のドクターとはダメだぞ」
「以前はあまり問題なく、食事ができたのですが、今は厳しくなりましたね。先生方もすごく気を使っています」
「公正競争規約内での対応は構わないが、それを超えることは絶対に避けておくべきだぞ」
「はい、よく理解しているつもりです」
「本当はお前なんかは、酒の席を利用した方が、ドクターと良い関係をつくれるタイプなのにな。(笑)」
「かつては、そういうパターンで仲良くなった先生もたくさんいます。しかし、時代が時代ですから、仕方ありません」
「ビジネスは公明正大にやらねばいけないということだな」
「しかし、チャンスがあれば交際費を使って、関係強化を図りたいとは思っています」
「臨機応変にな!」
「はい。戻ったらマネジメント会議で報告します」
「パシフィコ横浜だったな。報告を楽しみにしているよ」
「ビジネスチャンスとなる新鮮なネタを拾ってきます!」
ひとりごと
我々、医療機器ディーラーが生き残るためには、これまでのように流通を担うだけではダメでしょう。
いかに専門職の医師と医師をつなぐパイプ役になれるか?
あるいは、経営層に複数科にまたがる情報提供や課題解決の提案ができるか?
もしくは地域連携のネタを提供できるか?
こういったことが重要になってきます。
そのためにも、業界の知識や行政の目指す方向性をしっかりと把握しておかねばなりません。
【原文】
相位(しょうい)に居る者は、最も宜しく明通公溥(めいつうこうふ)なるべし。明通ならざれば則ち偏狭なり。公溥ならざれば則ち執拗なり。〔『言志晩録』第126条〕
【意訳】
宰相の地位に在る者は、特に世の中の事情に明確に通暁し、また処理に際しては公明正大でなければならない。通暁していなければ偏りが生じ視野が狭くなってしまう。また公明正大でなければ頑固となり事理に通じなくなるであろう。
【一日一斎物語的解釈】
リーダーの地位にある人は、その業界の内情に詳しく、かつ仕事の処理については公明正大を意識すべきである。