今日の神坂課長は、ひとりで『季節の料理 ちさと』にやってきたようです。

「あら、神坂君。久しぶりね」

「ママご無沙汰。最近、本を読むようになったから、飲み代を控えているんだよね」

「ふーん、そうなんだ。ギャンブルで大負けしたのかと思ってた」

「最近、ギャンブルも少額投資だよ」

「へぇ、随分お金のことに気を遣うようになったのね?」

「ガキもデカくなって、学費も塾代もバカにならないからね」

「そっか。『入るを量りて出づるを制す』だね」

「なにそれ?」

「中国古典の『礼記』にある言葉よ。収入に応じた支出を考える、ということよね」

「なるほど、まさにそれだ!」

「無駄を省かないとね。特にギャンブルはやめましょう。お酒とおいしい料理は控えないでさ」

「なんだよ、さりげなく店に来いというアピールじゃん!」

「バレた?」

「会社も同じだなぁ。やはり無駄なコストを押さえて利益を上げる必要があるし、無駄な仕事をスパッとやめて、時間を有効に使う必要があるもんな」

「ウチも最近はちょっとコストを気にしてはいるの。でも、やっぱり素材を落とすことは、私のポリシーに反するのよね」

「そうだよね。高級な魚介類がリーズナブルな価格で食べられるということが、このお店の存在価値だもんね?」

「うん。でも、やっぱり経営は厳しいのよね。だから、最近は仕入れを少し減らしているの。遅くに来られたお客様には品切れとなってしまうのが申し訳ないんだけど、食材を余らせるのが一番コストアップになっちゃうから」

「仕方ないよな。それで? 今日、もうすぐ品切れになりそうなおすすめ料理は何?」

「三河湾で獲れたばかりのミルクイのお刺身かな。ラスト1皿です」

「ミルクイ?」

「ミルガイとも言われている二枚貝よ。お刺身といっても、さっとお湯に通してあるから、甘みが増しておいしいわよ!」

「それ最高じゃない! では、それと生をお替わり!!」


ひとりごと

不況期は無駄を省くチャンスだとも言われます。

収益を増やすことももちろん必要ですが、無駄を省くために、分野間をまたぐ業務の見直しや、支払い方法の改善などを検討することも重要です。

減税が望めないわが日本においては、まずそこから手を付けるべきではないでしょうか?


【原文】
財を賑わすは、租を免ずるに如かず。利を興すは、害を除くに如かず。〔『言志晩録』第131条〕

【意訳
経済を豊かにするには、租税を減税するにこしたことはない。利益のあがる仕事を興すには、弊害となるものを取り除くにこしたことはない

【一日一斎物語的解釈
「入るを量りて出づるを制す」(礼記)という言葉があるように、自社の収益に見合ったコストを心掛け、無駄を省く必要がある。


mirukui0