今日の神坂課長は、佐藤部長と一緒に「季節の料理 ちさと」にいるようです。
「私は最近、毎日一章ずつ『言志四録』を読んでいるんですけどね、昨日の章は、婦人は貞操を守り、ただ夫に従えばよい、というような意味の言葉だったんですよ」
「当時と今とでは時代が違うからね」
「今の時代にそんなこと言ったら、日本中の田島洋子が騒ぎ出しますよね。(笑)」
「本当だね」
「ちさとママはどう思う?」
「うーん、貞操を守るとかではないけど、ずっと愛していられる男の人に出会えたらいいな、って思うわね」
「ふーん。そういう人に出会ったら、一歩下がって後ろからついていく?」
「もちろん!」
「やっぱり、ママも古風なんだよね。ウチのカミさんにそんなこと言ったら、『バカじゃない』って鼻で笑われるだけだよ」
「そんなことないんじゃない? 今まで神坂君についてきてくれたんだからさ」
「あいつは亭主元気で留守がいい、ってタイプの女ですよ!」
「酷い言い方ね。バチが当たるわよ」
「ママも昭和の人だな。今時、バチがあたるなんていう若い子はいないよ」
「昭和で悪かったわね」
「そうだ、神坂君。この後、お店を閉めたら、ママと飲みに行くつもりなんだけど、神坂君も一緒に行く?」
「えっ、それは遠慮しておきますよ。今、部長が私を誘ったときのママの表情を見ました? 『お願い、行くって言わないで』って顔してましたよ」
「うそっ! やめてよ、そんな顔してないもん!!」
「ママ、なんでそんなに真っ赤な顔をしてるの? 大丈夫だよ、俺はこれで帰るから。しっかり部長の一歩後ろを歩くんだよ!」
「神坂君のバカ!!」
ひとりごと
こんなことを書いたら、世の女性を敵に回すのかも知れませんが、やはり今の日本の家庭がおかしくなってきたのは、女性が強くなり過ぎたからではないでしょうか?
夫は外で働き、妻は家の中をしっかり整える。
これが理想だと思うのは、古い考え方なのでしょうか?
「あんたの稼ぎが悪いから、働くしかないんだよ!」というカミさんの声が聞こえてきそうですが・・・。
【原文】
婦徳は一箇の貞字、婦道は 一箇の順字。〔『言志晩録』第141条〕
【意訳】
婦人の徳とはただ「貞」の一字にあり、婦人の履み行う道はただ「順」の一字にある。
【一日一斎物語的解釈】
かつての日本の淑女とは、貞操を守り、夫の後ろからそっとついてきたものだが・・・。