今日の神坂課長は、同期入社の人事課鈴木課長とランチ中のようです。
「本当か?! ウチに女性の営業さんは厳しいだろう」
「それはそうだけど、男子学生に絞り込んでいては、思うように採用もできない時代だからな」
「ウチは女性は採用しないものだと思っていたよ」
「今までは暗黙のルールのようなものがあったのは事実だが、今はそうも言っていられない。実際に新卒の募集をかけると、結構女子も応募してくるからな」
「へぇー、そうなのか? 今までに面接をしたことはあるのか?」
「正直にいって、去年までは書類で落としていた。しかし再来年の新卒からは女性に門戸を開こうということになった」
「俺たち医療器械屋は結構力仕事もあるし、リフトカーなんかも運転しなきゃいけないし、女子に勤まるかなぁ?」
「すべて同じ業務を任せることもないだろう。女性には女性にしかできない仕事もあるはずだ」
「月に一回のものもあるし、下手にそれを聞けばセクハラだと言われそうだし、うまく行くイメージがないなぁ」
「俺もない!」
「なんだよ、だったらやめておけよ」
「この件については、西村部長が推進派で、平社長のお墨付きももらっているんだ」
「あのエロおやじ!」
「それで、お前に相談がある」
「なんだよ」
「女性の営業社員さんにどういう仕事をさせるべきかを考えて欲しい。ひとりだけ入社させると心細い面もあるだろうから、最低でも2名は採用予定なんだ」
「俺には女が何を考えているかなんてわからないよ。それはお前も知っているだろう。新美に頼めよ。あいつは意外と若い娘と仲良くやるの得意だぜ」
「別に新美を巻き込んでくれてもいいよ。とにかく女性営業社員採用プロジェクトの営業側の責任者がお前ならいい」
「勘弁してくれよ。昨日もカミさんと喧嘩してるんだぞ」
「ははは、そんなことは知ったことじゃないよ。この件は、平社長、西村部長、佐藤部長も了承済だ」
「お前、先に外堀を埋めやがったな!」
「じゃあ、頼むぞ」
「嫌だと言ったら?」
「そうだなぁ、お前に貸している金の合計は10万は超えているだろう。いますぐ全額を返済してもらおうかな」
「脅迫かよ?」
「貸したものを返してくれと言っているだけだ」
「これって、パワハラじゃないの?」
ひとりごと
職種によっては、女性に不向きなものがあるのは事実でしょう。
営業という職種も、業界を問わず、男性比率が高いようです。
しかし、労働人口が減少している中で、女性に活躍の場を与えることは重要な課題のひとつです。
男性とまったく同じ仕事をするのではなく、女性に特有の感性を活かした働き方を検討していく必要もあるでしょう。
【原文】
方今諸藩に講堂及び演武場を置き、以て子弟に課す。但だ宮閫(きゅうこん)に至りては未だ教法有るを聞かず。我が意欲す、「閫内に於いて区して女学所を為(つく)り、衆(おおく)の女官をして女事をばしめ、宜しく女師の謹飭(きんちょく)の者を延(ひ)き、之をして女誡(じょかい)・女訓・国雅の諸書を購解せしめ、女礼・筆札・闘香(とうこう)・茶儀を并(あわ)せ、各々師有りて以て之を課し、旁(かたわ)ら復た箏曲(そうきょく)・絃歌の淫靡ならざる者を許すべし」と。則ち閫内必ず粛然たらん。〔『言志晩録』第144条〕
【意訳】
最近、各藩では学問所や道場を設けて青年に勉強を課している。ただ大奥に対しては未だに教育方法がないと聞く。私は以下のような期待をしたい。「大奥に区画を設けて学問所を作り、多くの女官に女性にとって大切な道を学ばせ、慎み深い女性教師を招聘して、女性としての戒訓、和歌などの書を購読させ、礼儀作法、習字、香道、茶の湯などにそれぞれの教師をつけて学ばせ、その合間に、琴曲・弦歌などで淫らでないものは許可する」と。このようにすれば大奥は必ず粛然となるであろう。
【一日一斎物語的解釈】
男女同権であることにまったく異論はないが、女性には女性ならではの学ぶべき道があるはずだ。