営業2課の石崎君、善久君、梅田君が喫茶コーナーで雑談しているようです。
「信じられないよね。あれでカミサマは丸くなったんだって、大累課長とかは言うんだよ」
石崎君は、先ほど神坂課長にこっぴどく叱られた後のようです。
「殴られないだけいいんじゃない」
「ゼンちゃん、もし殴られたら即訴えてやるよ!」
「上司だからって、やっぱりものの言い方とか態度ってあると思うんだよ。あんな頭ごなしに叱られたら、どれだけ正しいことを言われても、頭に入ってこないもん!!」
「石崎さん、相当やられてましたよね」
その頃、佐藤部長の部屋では・・・
「石崎の奴、上司に接する態度じゃないんですよ。露骨にふてくされやがって!」
「また名コンビにトラブルかい?」
「名コンビだなんて勘弁してくださいよ。もう少し、上司を敬うように部長からも言ってください!!」
「だいぶご立腹なようだね?」
「半人前のくせに一丁前な意見を言ってくるんですよ。『課長はおかしいです!!』とか言って、それが上司に対する物言いか!って思いますよ」
「よく殴りかからなかったね」
「そんなことしたら、今のご時世、一発でアウトじゃないですか!」
再び、喫茶コーナーをのぞいてみると・・・
「でも、神坂課長は私と同行したとき言っていましたよ。『石崎は素直で純粋でいい奴だ。将来、絶対に凄い営業マンになるから、梅田もよく見習うように』って」
「えっ、マジで?」
その頃、部長室では・・・
「そういえば、石崎君と面談をしたときに言ってたなぁ。『私は神坂課長を心から尊敬しています。あの人のようにお客様の心をつかむ営業マンになりたいです』ってね」
「えっ、本当ですか・・・」
ひとりごと
上司に対しては、その人の人間力如何には関係なく、その職位に対して敬意を払いなさい、と森信三先生は言っています。
もちろん、その人自身に敬意を持つことができれば理想ですが、やはり部下として最低限のマナーというものはあるでしょう。
ところで、小生自身を振り返ってみますと、思い出すのも恥ずかしいくらい、過去の上司の皆さんに失礼な態度をとってきたことを今更ながらに後悔しております。
【原文】
官長を視ること、猶お父兄のごとくして、宜しく敬順を主とすべし。吾が議若し合わざること有らば、宜しく姑(しばら)く前言を置き、地を替えて商思すべし。竟(つい)に不可なること有らば、則ち笱従(こうじゅう)す可きに非ず。必ず当に和悦して争い、敢て易慢(いまん)の心を生ぜざるべし。〔『言志晩録』第148条〕
【意訳】
所属の長に対するには、あたかも父兄に対するように、よく敬い順うことを重視すべきである。自分の意見と合わないことがあれば、少しの間は前言をそのままにして、立場を替えて考えるべきである。最終的に長の意見に良くないことがあるならば、そのまま従うようなことをすべきではない。そのようなときは、表情は穏やかにしつつ論争し、間違ってもあなどる態度を見せてはいけない。
【一日一斎物語的解釈】
上司との付き合い方は慎重さを要すべきである。常に敬意を払い、立場を尊重しなければならない。安易に口答えをしたり、異論を唱えるのではなく、言い方や態度に十分に気を付けて意見を言うことを忘れてはならない。