今日の神坂課長は、医療機器業界の賀詞交歓会に参加しているようです。

「あそこにいるのがA&J社のアジア法人トップ・柿本社長だよ」
佐藤部長が神坂課長にレクチャーしているようです。

「あー、あの人が有名な柿本さんですか」

「あの人は人格者としても有名でね。誰に対しても腰が低く、どんな人の話にも耳を傾ける人らしいよ」

「相当忙しい方だと思うのに、よくそんなことができますね」

「社内に社長に直接意見ができる目安箱を設置して、ほぼ毎日目を通しているらしい」

「でも、仮に目安箱を置いても、社員の人は本音で意見が言えるのですかね?」

「それはすごく危惧しているらしい。つねに、世の中のため、会社のためになると確信できるなら、堂々と意見を言ってくれとメッセージを発信しているらしいよ」

「すごいなぁ。やはり人の上に立つ人は、謙虚に誰の意見にも耳を傾けないといけないんだろうなぁ。私なんか、つい石崎の意見をバカにしてしまいますからね

「そうだね。我々もまだまだだよ。それから意見を述べる人にも覚悟を求めているのも勉強になるね」

「そうですね。ただ言いっ放しにするなら、誰でもできます。覚悟をもって意見を言わせる。しかし、決して阿ったり、臆したりしないような雰囲気をつくる。めちゃくちゃ難しいことですね」

「世界第2位の健康産業メーカーのトップにしてそれだからねぇ。私たちも少しでも近づかないとね」

「やぁ、佐藤さん。お久しぶりです。明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。体調はどうですか?」

「柿本さん、おめでとうございます。こちらこそご無沙汰しております。入院中にお見舞いに来て頂いたお陰ですっかり元気になりました」

「たまたま、N市に出張していたからね。でも、今は顔色もよさそうで安心しましたよ」

「柿本さんはいつもお元気ですねぇ」

「僕の健康の元はゴルフと水泳です。暇さえあればゴルフか泳ぐかどちらかで体を動かしているので、年中顔は真っ黒ですよ。(笑)」

「とても御年63歳には見えません」

「歳のことは言わないでください。ああ、そういえばこの前は突然電話してしまって申し訳なかったです。いろいろとディーラーさんの意見が聞けて有意義でした」

「ウチのような中小ディーラーでよければ、いつでもご連絡ください」

「ありがとうございます。では、また!」

「ぶ、部長、柿本社長と知り合いだったのですか?」

「狭い業界だからね。でも、それほど親しいというわけではないんだよ。それなのにああして声をかけてくれる。病気で入院したときには、突然お見舞いに来てもくれた。それが柿本さんの人たらしなところなんだろうね」

「なるほどなぁ。今日の特別講演の先生は、滑舌が悪くて何を言っているのかよくわからなかったので、時間を損したと思っていたんですよ。でも、柿本社長の話が聞けたので、とても勉強になりました。やっぱり来てよかったです」


ひとりごと

小生の大好きな『論語』の言葉に、「下問を恥じず」という言葉があります。

孔子が孔文子という人を評して言った言葉で、その意味は、「目下の人に教えを乞うことを恥としない」という意味です。

自分より地位の下の人に教えを乞うことは、立派な人物でなければできない、と孔子も認めています。

リーダー職にある方は、下問を恥じることなく、真摯に耳を傾けましょう。

そして、もし自分が上位者から意見を求められることがあれば、そのときは堂々と自分の意見を主張しましょう!


【原文】
権貴の徳は、賢士に下るに在り。賢士の徳は、権貴に驕るに在り。〔『言志晩録』第156条〕

【意訳】
権力者や富裕者の有すべき徳は、賢人に対して謙虚な態度をとるところにある。一方、賢人の有すべき徳は、権力者や富裕者に対して阿らないところにある

【一日一斎物語的解釈】
上位者は有識者の意見に謙虚に従うことを心がけよ。有識者は上位者に対し、臆することなく自分の意見を述べよ。


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