今日の神坂課長は、佐藤部長の部屋で談笑中のようです。

「昨日、そういう話を善久としたんです。(内容については昨日参照)」

「彼は慎重さが良さでもあり、時には欠点にもなるね」

「はい。でも、彼のような存在も必要なことはわかっていますので、その慎重さが武器になるように育てていきます」

「素晴らしい! 欠点の是正より、長所の伸長が大事だね」

「はい。それにしても、仕事の任せ方は難しいですね。どこまで任せられるのかは、いつも悩みます」

「一斎先生は、その人の度量と才能と力量がその仕事を処理できるレベルにあるかをよく判断しなさい、と言っているね」

「才能と力量はなんとなくわかりますが、度量というのはどういうことですか?」

「よくいう『器の大きさ』っていうことだね」

「なるほど。重要な仕事をする際に、小さなプライドをもっているような奴はかえって足手まといになりますね。他人の言葉を素直に受け入れることも、仕事を処理する上では重要ということかぁ」

「神坂君を課長に抜擢するときに一番悩んだのはそこだったよ。(笑)」

「私の度量ですか?」

「うん。神坂君は才能と力量は申し分ないという評価だった。問題は部下と上手にやっていけるだろうか、というのが我々の懸念材料だった」

「たしかに若い頃の私は、他人のアドバイスを素直に聞けなかったですね。ただ、不思議と佐藤部長の言葉だけは素直に聞けました」

「まさにそれ! 川井さんや西村さんが佐藤が上司なら大丈夫だろう、と言って、結局課長昇格が決まったんだよ」

「それは知らなかったです。ところで、最近の私はどうですか? 少しは器も大きくなってきましたかね?」

「正直に言っていい?」

「えっ、なんか怖いな」

「じゃあ、言わせてもらうよ。我々全員の期待をはるかに超えてくれたよ」


ひとりごと

仕事には、度量と才能と力量が必要だという一斎先生の言葉は心に染みます。

仕事の質が高くなればなるほど、才能と力量以上に度量が求められます。

度量とは、言い換えれば、人間力・徳性・器の大きさということになるでしょう。

皆さんは、器を大きくすることに時間を使っていますか?


【原文】
人の事を做すには、須らく其の事には就いての自ら我が量と才と力との及ぶ可きかを揆(はか)り、又事の緩急と齢の老壮とを把って相比照し、而る後に做し起すべし。然らずして、妄意手を下さば、殆ど狼狽を免れざらん。〔『言志晩録』第158条〕

【意訳】
人が仕事に着手する場合、まずその仕事を成し遂げるだけの度量・才能・力量が自分自身にあるか否かをよく判断し、その上で仕事の緊急性と自分の年齢とをよく比較して、その後に着手すべきである。そうせずに、妄(みだ)りに手を付けると、必ずうろたえることになるだろう

【一日一斎物語的解釈】
仕事に着手するにあたって、自分の度量と才能と力量で対処可能かどうかを慎重に判断すべきである。そのうえで緊急性や重要性も鑑み着手すべきだ。


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