今日の神坂課長は、読書会で知り合った松本さん(通称フミさん)と新年会の真っ最中のようです。

「フミさんは、製造業の社長さんだったんですよね?」

「オー、イエス! なんとか役目を全うできたよ」

「昨日も同僚と話をしたんですけどね。決断することって難しいですよね? フミさんは、どういう考え方で決断を下していたのですか?」

「イッツ・ソー・ハード! 決断するのは大変だけど、それが社長の仕事だからねぇ。私は、常に失敗しないだろうか、お客様にご迷惑をかけないだろうかと心配ばかりして、ビクビクしながら決断してきたなぁ」

「へぇー、意外ですね。なんか、ビシッと決めそうなイメージですけど」

「トップはそれくらい慎重でちょうど良いんじゃないかな。トップがギャンブルをするような会社は長く続かないだろうしね」

「そうですねぇ。フミさん、我々のような中間管理職にはどういう指示をしていましたか?」

「チャレンジしろ、ってことかな。私が慎重な分、彼らには大胆な発想で物事を考えてもらいたかったから」

「なるほど、そこでバランスを取るわけですね」

「バット! 絶対にやってはいけないことは、お客様を騙すような行為だね。自分たちの損得を優先して、お客様の課題解決を後回しにするようなことは、断固としてするなと言ってきた!」

「損得より善悪ですね」

「ザッツ・ライト。つねに善を追及すれば、会社は簡単には傾かない。仮に傾いても、社員さんを信じて、善を追い求めれば、必ず会社は立ち直るよ」

「説得力があるなぁ」

「ゴッドも大胆な発想で、チャレンジした方がいいよ。ユーはまだ若いからね」

「ウチの部長も慎重派で知性派なので、それでちょうどバランスがとれるかも知れないですね?」

「イエス・イット・イズ。ユーは、自分が正しいと思ったことはどんどんチャレンジしちゃいなよ!」

「なんだか、フミさんがジャニー喜多川さんに見えてきました・・・」


ひとりごと

トップマネジメントと中間マネージャーでは、責任の重さが違いますので、同じようなスタンスではいけないということでしょうか?

実績を上げてトップに立った人は、この点をよく心しておく方がよさそうです。

中間マネージャー時代のノリで安易な決断を下せば、今度は自分の組織だけでなく、会社全体を傾かせてしまう恐れがあることを肝に銘じておくべきです。


【原文】
長官たる者は、小心翼翼(よくよく)を忘るること勿れ。吏胥(りしょ)たる者は、天網恢恢を忽(ゆるがせ)にすること勿れ。〔『言志晩録』第160条〕

【意訳】
多くの人の上にたつ上官は、常に細かいことにも気を配り慎み深く対処することを忘れてはいけない。また下級役人は、善悪への対処に遺漏がないようにするべきだ

【一日一斎物語的解釈】
トップマネジメントは、常に細心の注意を払い、臆病であるくらいがちょうどよい。また中間マネージャーは、正しい商売をすることを常に心掛けるべきだ。


kaisya_tousan