大累課長のデスクで雑賀さんが激高しているようです。

「なんで私にやらせてくれなかったのですか?! ITに関しては私が社内で一番知識があると自負しているんです!」

「それはわかるけど、お前にはまだ終えてない仕事があるじゃないか。だから、今回は藤倉に振ったんだよ」

「藤倉はまだ新人ですよ。できるわけないじゃないですか!」

「そんなことはないだろう。それに、そう思うならお前がサポートしてくれればいいじゃないか」

「嫌ですよ。それなら最初から任せて欲しかったです」

場所が変わって、喫茶コーナーで、大累課長と神坂課長が雑談をしているようです。

「という具合で、雑賀の奴、俺が業務の負荷を心配して仕事を割り振りしたのに、全然理解してくれないんですよ」

「雑賀らしいな。実際、2つの仕事の両立は可能なのか?」

「まあ、できなくはないでしょうね。ただ、あいつは遅くまで残って仕事をする傾向があるので、これ以上仕事を増やしたくなかったんですよね」

「働き方改革ってやつか!」

「4月以降は、ウチも対象になりますから」

「ところで大累は、今回のITの仕事を藤倉に振ったら雑賀がキレるということは予測できなかったのか?」

「いや、まずそうなるだろうなとは・・・」

「それなら、事前にお前の気持ちを伝えてやればよかったんじゃないか? 『本当はお前に任せたいけど、諸事情があるから藤倉にやってもらう。だから、ぜひサポートしてくれ』って感じでさ」

「たしかにそうでしたね。ああいう仕事の振り方をすると、奴は藤倉をサポートしないでしょうからね。心の狭い奴ですよ」

雑談を終えて大累課長がデスクに戻る途中、会議室の中から声が聞こえてきたようです。

「藤倉、この仕事はまだお前には荷が重いんじゃないか?」

「はい、ちょっとビックリしました。でも、課長がせっかく任せてくれたので、頑張ってみたいです!」

「そうか、じゃあ頑張れ! 俺はIT関係の知識は社内で一番だと自負しているから、わからないことがあったら遠慮なく聞いてこいよ」

「ありがとうございます!!」

「あっ、このことは大累課長には内緒な!」


ひとりごと

リーダーは、メンバーの個々の能力をよく把握し、適材を敵所に配置することを意識すべきです。

ところが今回の雑賀さんのように、自分が一番だと思っている能力を発揮できる仕事を他者に与えてしまうと、意外な軋轢を生んでしまうことがあります。

仕事を一つ降るのにも、細心の注意が必要だということは、肝に銘じておきましょう!


【原文】
人の事を做(な)すは、各々本職有り。若し事、職外に渉らば、仮令(たとい)功有りとも、亦多く釁(きん)を取る。譬えば、夏日(かじつ)の冷、冬日(とうじつ)の煖(だん)の如し。宜しきに似て宜しきに非ず。〔『言志晩録』第164条〕

【意訳】
人が仕事を処理する場合、それぞれに本業がある。もし本業以外の仕事を任せると、仮にうまく処理できたとしても、ときに仲たがいを生じてしまう。たとえて言えば、夏に寒い日があったり、冬に暖かい日がある様なものだ。したがってそうした行為は、良いことのうようで実際には良くないことなのだ

【一日一斎物語的解釈】
人にはそれぞれ専門分野がある。仕事を与える際は、その人の専門性をよく理解して与えるべきである。本来は別に専門性の高い人がいるにも関わらず、その人以外の人に仕事を与えると人間関係がこじれることもある。


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