今日の神坂課長は、長男の礼君の買い物に付き合っているようです。

「なんだよ、いつの間にオシャレに目覚めたんだ?」

「だって、ダサい格好してたらモテないじゃん」

「馬鹿たれ、男は見た目じゃない。ハートだ!」

「どっちが馬鹿だよ。そんな時代遅れなこと言ってたら笑われるよ」

「お前、Mattみたいになるなよ」

「あれはないな」

「ところで、進路は決まったのか? 母さんが心配してたぞ」

「本当はN大に行きたいんだけど、俺の学力だと無理な気がするんだよね。高校受験の時も第一志望校には落ちたしさ」

「過去のことをいつまでも悔やんでも仕方ないぞ。それになんの努力もせずに未来を心配するのもナンセンスだ」

「まあ、そうだけど。また落ちて悲しい思いをしたくないしな」

「いいか、礼。人間は失敗をして悔しい思いをするから成長できるんだ」

「えっ?」

「俺なんか失敗ばかりの人生だ。でも、やる前に諦めたことはない。やるだけやって、ダメなら仕方ないと思ってチャレンジしてきたんだ」

「それって辛くない?」

「辛いよ。辛いから次は頑張ろうって思うんじゃないか」

「父さん、ポジティブだな」

「俺はスーパーポジティブだよ。なあ、礼。大事なのは過去でも未来でもないぜ。今だよ、今」

「今か」

「N大に行きたいなら、行けるようにしっかり勉強してみろ」

「わかったよ。やるだけやってみる。ダメだった時はフォローしてくれよ」

「ダメだった時のことは考えるな!」

「そうだったな。よし、頑張ってみる。だからさ」

「なんだよ?」

「さっきのパーカーが欲しいんだけど、お金が足りないから貸してくれない?」

「俺は物で釣るのは嫌いだ」

「出世したら倍にして返すよ」

「おー、いいねぇ。そういうポジティブな考え方は好きだな。よし、じゃあ買ってやるよ」

「マジで?」

「お前なら大丈夫だ。やる時はやる男だからな」

「うん、そうだね。その辺は母さんに似てるから!」


ひとりごと

過去を悔やんだところで過去は変えられません。

未来を憂いたところで、未来は自分の思うようにはなりません。

しかし、過去の意味づけを変えることはできます。

そして、ある程度は未来をコントロールすることもできます。

それを可能にするのは、今できることに全力を尽くすことなのです。


【原文】
心は現在なるを要す。事未だ来らざるに、邀(むか)う可からず。事已に往けるに、追う可からず。纔(わずか)に追い纔に邀うとも、便ち是れ放心なり。〔『言志晩録』第175条〕

【意訳】
心は今この時に置く必要がある。まだ起きてもいない未来のことに打算を走らせではいけない。同様にすでに起きてしまった過去のことをいつまでも追いかけてもいけない。少しでも過去を追い求めたり、未来に打算を走らせてしまえば、これは心を失っていることになるのだ

【一日一斎物語的解釈】
過ぎてしまった過去を悔やんだり、懐かしんでも意味がない。まだ来ぬ未来を心配したり、期待し過ぎてもいけない。大事なのは今ここなのだ。


job_fashion_model_man