今日の神坂課長は、石崎君と同行しているようです。

「ウチのガキ共はYouTubeばっかり観てるんだよ。たまには本でも読んで欲しいよ」

「あ、今時の若者はみんなYouTubeですよ。私もほとんどテレビは観ません。もちろん本も読みません」

「堂々と自慢することか! しかし、大丈夫なのかそういうネット動画ってやつは?」

「結構、グロい動画とかエロ動画も簡単に観れますよ」

「そうだろう。ああいう動画は規制も弱いよなぁ」

「仮に規制しても、次々に上がってきますからね」

「いたちごっこかぁ。あいつらもそういう動画を見ているんだろうな」

「高校生と中学生ですよね? 多分、メインはヒモギンとか、マジメ社長みたいなユーチューバーの動画だとは思いますけどね」

「なんだよ、そいつらは?」

「知らないんですか? ヒモギンは月収1億円以上稼いでいるらしいですよ」

「月収1億?! マジかよ」

「子供たちのヒーローですね」

「そんな奴がヒーローなのかよ? 時代が変わったなぁ。それに簡単に人を殺すようなゲームもあるしな。もう、今の時代は子供の目や耳から入る情報を規制するのは不可能なんだろうな。本当は、なるべく心の入り口を閉ざして、子供が見るべきではない情報が入ってこないようにしたいんだけどなぁ」

「それは無理でしょうね

「それと同じく、心の出口もしっかり閉じて、不用意な言動を慎むことも必要なんだよ」

「それは、課長にとってはとても重要なことだと思いますよ!」

「やかましいわ! でも、そのとおりだな。言葉は釘だというものな」

「一度打ち込んだら、仮に引き抜いても釘穴が残る。言葉も同じで、一度不用意な言葉を言ってしまえば、後で訂正しても相手の心には大きな傷が残るんですよね?」

「そう、そのとおり。だいぶ前に話したことをよく覚えているな」

「そりゃ、そうですよ。なぜなら私の心も釘穴だらけなんですから!」

「なんだよ、その穴を開けたのは俺だって言いたいのか?」


ひとりごと 

心の入り口と出口にしっかりとした門番を置いておくべきなのだ、と一斎先生は言います。

もちろん、無暗に人を傷つけるような言葉を慎むのは当然です。

しかしそれ以上に、情報の洪水に晒されている現代においては、心の入り口の規制がとても重要になってきます。

フェイクニュースなども氾濫する時代に、正しい情報だけを入手するのはとても困難になりました。


【原文】
視聴を慎みて以て心の門戸を固くし、言動を謹みて以て心の出入を厳にす。〔『言志晩録』第176条〕

【意訳】
目で視ることや耳で聴くことを慎重にすることで心の門戸を固くして無暗に開放しないようにし、言動を慎重にすることで心の出入りを厳重にする

【一日一斎物語的解釈】
心の入り口をしっかりと規制して、入ってくる情報には細心の注意を払い、心の出口も厳重に管理して、言動を慎むべこきだ。


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