今日の神坂課長は、久しぶりに相原会長とナイター競艇にやってきたようです。

「うわぁ、また1号艇が沈んだ! これも穴になりますねぇ」

「まさか峰が1号艇で負けるとは、さすがに予想できないなぁ」

「インが圧倒的に強いこのG競艇場なのに、今日は全部1号艇が負けてますよ。どうなってるんですかね?」

「でも、これが競艇じゃないの?」

「どれだけ真剣に予想したところで、予想通りの展開になることの方が少ないですもんね」

「多分、選手もそうじゃないのかな? もちろん何パターンもの展開を考えているんだろうけど、そういう想定を超える展開になることも多いんじゃないかな」

「たしかにそうですね。自分以外の5人のレーサーの動き次第で、展開はガラッと変わりますからね」

「そう考えると、競艇からも教えられることはあるね。人間の世界の出来事というのは、自分だけですべてを思い通りに動かすことはできないということを改めて学べたよ」

「他人がどう動くは、他人の課題であって、そこは課題の分離が必要なんでしょうね」

「課題の分離か、なるほどな」

「自分と周囲の人の動きをコントロールできるものがあるとすれば、それは神様だけなのかも知れません。いわゆる天運というものですね」

「そう、まさに天運だ。僕はある時にそれに気づいてからは、あまり小さなことで悩まなくなったよ」

「なにがきっかけだったのですか?」

「ある病院の大口商談がきっかけなんだ」

「話してもらっても良いですか?」

「もちろん。たしか内視鏡システムを5セットすべて入れ替えるという商談だったかな。金額は1億円を超えていたと思う。もう、ウチがO社の内視鏡を納入するのがほぼ決定していたんだ。ところがいざ契約書締結という前日になって、部長先生が急に亡くなられたんだよ」

「そんなことが・・・」

「結局、商談は白紙になって、その後はO社とF社の両方の内視鏡を買うことになってしまった」

「悔しいですね」

「そのときは、悔しいという気持ちすら起きなかった。どれだけ頑張っても最後は時の運なのかと捨て鉢な気持ちにもなったよ」

「わかります」

「でも、少し冷静になってから考えてみると、これが天運なんだと思った。最後は天が決めるんだから、結果に拘ってはいけないんだと。ただ、今できることを精一杯やればそれで良いんだということを教えられたんだよ」

「私なら、ブチ切れてやる気を無くしそうな出来事です。そこからそういう学びを得るのは、会長の凄さです」

「さあ、昔話はこれくらいにしょう。残り1レース、今日はお互い全敗中だ。精一杯展開を予想して、結果は天に任せようじゃないか!」


ひとりごと

自分の思い通りにならないのは当然のことだと思えれば、悩みごとの半分はなくなったようなものだ、という一斎先生の言葉は良いですね。

自分の思いどおりにならないと、なぜ自分だけがと思いがちですが、実際には誰にでもそういう場面はあるものです。

小生は、自分の思い通りにならないことがあった日は、「今日はそういう日なんだ」と思うことにしています。

つまり、明日は違う一日がやってくるはず!という期待を込めて飲み込むわけです。


【原文】
人事は期せざる所に赴く。究(つい)に人力に非ず、人家の貧富の如き、天に係る有り、人に係る有り。然も其の人に係る者は、竟(つい)に亦天に係る。世に処して能く此の理を知らば、苦悩の一半を省くのみ。〔『言志晩録』第191条〕

【意訳】
人の周囲で起こることは、予期できないものである。これは人間の力によるものではない。家柄に貧富の差があるように、天運によるものがあれば、人間の力によるものもある。しかも人間の力によると思われるものは、実は天運によるものなのだ。世の中を渡って行く上でこの道理を理解していれば、苦悩の半分は省くことができよう

【一日一斎物語的解釈】
人間の力ではどうしようもない出来事もある。自分の目の前のことに全力を尽くし、あとは天運に任せるという生き方をすれば、抱えている悩みごとの半分は消えてしまう。


boatrace