営業部特販課の大累課長が雑賀さんと来年度末更新の大型案件について打ち合わせをしているようです。

「雑賀、A医大のMRI更新の件はどうなってる? 1年後とはいえ、そろそろドクターと仕様の確認が必要なんじゃないか?」

「まだ1年先ですよ。半年前くらいからで十分ですよ」

「お前、1億を超える大型案件だぞ。そんな呑気なこと言ってる場合じゃないだろう」

「大累課長は気が短すぎますよ。私はドクターもしっかり押さえていますから、大丈夫ですって!」

「お前さ、2年前に同じことを俺に言ったのを覚えているか?」

「あっ」

「T厚生病院のMRIの商談を落としたときも、同じことを言ったよな?」

「あれは、急遽ドクターが異動となるという想定外のことがあったから・・・」

「今回だって4月に異動があるかも知れないじゃないか」

「それは4月になればわかることですから」

「今動けば、情報くらい取れるだろう。キーマンに異動がないかは確認しているのか?」

「まだですけど・・・」

「今すぐ行ってこい! 今日はもう3月27日だぞ。そのくらいの情報を取れないでどうするんだよ!!」

「わかりましたよ、行ってきますよ」

雑賀さんは慌てて出かけたようです。

「雑賀は相変わらずだな」

「あー神坂さん、聞いてました?」

「あれだけデカい声でやりとりされれば、嫌でも耳に入ってくるよ」

「神坂さんはどう思います?」

「今回の件に関しては、大累の意見が正しいだろうな」

「ですよね!」

「ただ、たしかにお前はせっかち過ぎるところもある。俺も同じくせっかちだ。一方、雑賀とか廣田とか石崎なんかは意外とのんびり屋だよな」

「たしかにそうですね」

「お互いにそういう自分の性格をよく把握して、急ぎ過ぎず、のんびりし過ぎず、タイムリーに行動することを心掛けたいよな」

「神坂さん、たまには良い事も言うんですね」

「たまに? 俺はいつだって紅茶のような男だよ」

「紅茶?」

「常にセイロン(正論)しか言わないからさ」

「・・・」


ひとりごと

人間だれしも性格に癖があります。

せっかちもいれば、のんびり屋もいます。

そうした性格を変えるということは、簡単なことではありません。

どちらが良いか悪いかと考えるよりも、自分の性格をよく把握して、悪い傾向が出ないように抑制すればよいのでしょう。

一斎先生の言うように、天の運行のように自然に振舞えるのは、聖人君子だけです。

厳に、一斎先生ですら、自分の性格に癖があることを認めているのですから。


【原文】
人の事を做すは、須らく緩ならず急ならず、天行の如く一般なるを要すべし。吾が性急迫なるも、時有りて緩に過ぐ。書して以て自ら警む。〔『言志晩録』第237条〕

【意訳】
人が事をなす場合は、すべてにおいてゆっくり過ぎても急ぎ過ぎても宜しくない。ただ天の運行のように自然であるべきである。私の性質はせっかちであるが、時にはゆっくりし過ぎてしまうこともある。ここに自ら書して戒めとしたい

【一日一斎物語的解釈】
仕事を処理する際には、急ぎ過ぎず、ゆっくり過ぎず、そのベストのタイミングを逸しないことが肝要である。

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