今日の神坂課長は、喫茶コーナーで大竹課長と会話をしているようです。

「タケさん、なんか元気がないね」

「だって、志村けんが死んじゃったんだぜ。俺の子供の頃のヒーローみたいな人だからさ。まだ70歳だよ!」

「あのニュースはビックリしました。カミさんとは、個人のコメントもないし、かなり危ないかもなんて話はしていたのですが、本当に現実になると言葉が見つからないですね」

「俺、はじめてだよ。芸能人の訃報を聞いて泣いたの」

「そういえば、目が赤いですね」

「今日は食事をする気も起きないから、ランチは抜くかな」

「COVID-19 は糖尿病を持っていると重症化するらしいですよ。タケさん、気を付けた方が良いんじゃないの? いっそのことこれを機に炭水化物を減らしたら?」

「親父が糖尿病患者だからな。血は受け継いでるかもなぁ。でも、炭水化物のない食事はひもじいもんね?」

「だったら、酒をやめる?」

「それは人生の楽しみを失うようなものだしなぁ」

「どっちかを我慢することが必要なんじゃないの?」

「そうだけどなぁ。ところで、神坂君。今日も薄着だねぇ」

「子供は風の子っていうけど、俺は今でも心は五歳児ですから。この程度の寒さでカーディガンとかセーターを着るなんて、考えられませんよ」

「寒くないの?」

「寒いですよ。でも、寒くないと思い込むんです。『心頭を滅却すれば火もまた涼しです」

「滅却できてないから、寒いんでしょ?」

「あ、なるほど。そうだ、タケさんも心頭を滅却すれば、空腹を感じなくなるんじゃない?」

「神坂君、俺たちが心頭を滅却できると思うかい?」

「道は果てしなく遠い気がします」

「そうだろう。まずは我慢かなぁ」

「そうです、まずは糖分を減らす我慢から始めましょう! 志村さんが教えてくれた気がしますよね。COVID-19 は誰でも罹患する病気だし、世間が思っている以上に重症化のリスクも高いということを」

「それは思った。あの人は俺たちにずっと最高の笑いを届けてくれた。そして最後には、自分の命と引き換えに、病気に対する備えの大切さを教えてくれたのかもな」

「そうかもしれませんね。これで、日本国民全体が外出を自主的に控えるようになるでしょうね」

「やっぱりあの人は最後まで俺のヒーローだったなぁ」


ひとりごと

今回のストーリーはいつも以上にこじつけ感が強いかも知れません。

しかし、そうしてでも志村けんさんについて触れたかったのです。

東村山音頭、カラスの勝手でしょ、ひげダンス、アイーン、だいじょうぶだぁ、だっふんだ、などなど、数々の逆を世に送り出した天性のお笑いスターであり、我々世代のヒーローのひとりでもあったのが志村さんでした。

タモリさんもたけしさんも、お笑いの第一線からは退いている感もある中で、まだまだ現役でお笑いをやり続けている大御所は、さんまさんと志村さんくらいだったでしょう。

本当に残念ですし、衝撃的なニュースでした。

これで、日本国民全体に良い意味での自粛ムードが進むはずです。

志村さんの死を無駄にしないためにも、そうすべきですね。


【原文】
衣薄くとも寒相を著けず。食貧しくとも餒(だい)色を見(あらわ)さず。唯だ気充つる者能くすることを為す。然も聖賢の貧楽は、則ち此の類に非ず。〔『言志晩録』第241条〕

【意訳】
薄着であっても寒そうな仕草は見せず、空腹であってもひもじい様子をみせない。これは気力の充実した人にしかできないことである。しかしながら、聖人や賢人が貧を楽しむというのは、こういうことではない

【一日一斎物語的解釈】
薄着で寒さに耐えることも、空腹を表情に出さないことも、気力が充実していればこそ可能であるが、努力をしてそのレベルを維持しているうちは本物ではない。


志村けん