新年度を迎え、営業部では期初会議の資料作成をしているようです。

「じゃあ、石崎君は器械の集計をしてくれる? 私は、デバイス(消耗品)のアイテム別計画値をまとめるから」

「え、山田さん。そっちの方が大変ですから、私がやりますよ」

「大丈夫。長年やってきているから、慣れているのでね」

「カッコいいなぁ。カミサマだったら、絶対面倒な仕事を私に回してきますよ」

「以前の神坂課長ならね。今は違うんじゃないかな?」

「そうですかねぇ? あのオッサンは面倒くさがりだから」

しばらくすると、神坂課長が部長室から出てきました。

「参ったなぁ、COVID-19の影響を数値化してくれと頼まれちゃったよ」

「課長、COVID-19の影響でどれくらい症例が減り、それによってどれだけ売り上げが落ちたかを調べるということですか?」
山田さんが質問しています。

「そう。それと仮にこの状況が7月まで続いた場合の上期の予測も知りたいと言われた」

「なるほど」

「神坂課長、それ私がやりましょうか?」

「お、石崎少年。どうした、4月になって心を入れ替えたか?」

「違いますよ、私は元々ポジティブです! 山田さんが、デバイスの集計をやってくれるというので、それなら私がCOVID-19の件をまとめようかなと思いまして」

「ありがとうな。しかし、これはちょっと心が萎える集計だからな。やっているうちにネガティブになってしまう気がするから、俺がまとめるよ。みんなには担当病院の症例の変化とデバイス毎の売上推移を出してもらうから、よろしくな」

山田さんが石崎君に目配せをしています。

「なんだか良いですね、この職場。上司や先輩が率先して大変な仕事を引き受けてくれるなんて、すごい事だと思います」

「その方が気持ちが良いんだよ。ね、山田さん?」

「そうですね。難しい仕事を後輩に振れば、楽にはなりますが、心苦しく感じますね」

「ところで、少年。お前、また俺の悪口を言ってなかったか?

「えっ、ま、まったく心当たりがないですけど・・・」

「本当か? さっきも部長室でくしゃみが止まらなかったんだよなぁ」

「課長、それってまさか?」

「だ、大丈夫だよ! 今朝検温したときは36.5度だったし、喉も痛くないし、咳もないからな」

「みなさん、ちゃんとマスクをつけましょう!」

「俺をばい菌みたいに扱うなっつうの!!」


ひとりごと

この一斎先生のご指摘は、腹に落ちますし、ちょっと耳が痛いですね。

なるべく大変な仕事は自分が引き受けるという意識を持てば、その仕事をしている間、心は爽快であるような気がします。

逆に、難解な仕事を他人に振って、自分が楽をしている時は、心は晴れません。

面倒な仕事を進んで引き受けることで、自らを鍛錬していきましょう!!


【原文】
人と事を共にするに、渠(かれ)は快事を担い、我れは苦事に任ぜば、事は苦なりと雖も、意は則ち快なり。我れは快事を担い、渠は苦事を任ぜば、事は快なりと雖も、意は則ち苦なり。〔『言志晩録』第243条〕

【一日一斎物語的解釈】
人と一緒に仕事をする際、相手に愉快な仕事をやってもらい、自分は辛い仕事を引き受ければ、仕事自体は辛いかもしれないが心は愉快である。相手に辛い仕事を任せて、自分が楽しい仕事をすれば、仕事は楽しいかも知れないが、心は苦しくなるであろう

【所感】
自分の嫌な仕事、難しい仕事を敢えて引き受けることで、自己貢献感を抱くことができ、心は満たされる。


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