今日の神坂課長は、久しぶりに会社に出社したようです。

「本田君、久しぶりだねぇ。ご家族共々元気?」

「ありがとうございます。幸い、みな元気にやってます」

「それがなにより。ふわーっ。ダメだ、あくびが止まらないなぁ」

「遅くまで起きていたのですか?」

「そんなこともないんだけどねぇ。寝る寸前まで本を読んでいたけど、1:00過ぎには寝たと思うんだよね」

「寝る前に本を読むと、寝ている間もあれこれ考えてしまうので、熟睡できないらしいですよ!」

「マジで?! 最近は毎晩寝る前に読書しているんだけど、それが熟睡できない原因だったのか! 年のせいかと思ってた」

「課長、まだ40代前半じゃないですか!」

「そうでした・・・」

「逆に言うと、なにか答えを出したいときは、寝る前にそのことを考えて寝ると良いとも聞きました」

「へぇー、たしかに人間の臓器は不眠不休だもんな。脳みそは夜中も働いてくれているわけだ」

「だから、そういうもしものために、普段は休ませてあげた方が良いんじゃないですか?」

「そうだよね。夜という時間は、身体だけでなくて、精神も開放してあげなきゃいけない時間帯なんだろうね」

「そうですよ。最近の課長はちょっと詰め込み過ぎじゃないですか?」

「それはそうなんだけど、今まで俺の脳みそはほとんど空っぽだったから、その分を挽回しないとね!」

「すごいなぁ。やっぱり課長は、やる時はやる人ですね!」

「わかってくれる? 意外とコツコツ努力するタイプだったりするんだよ!」

「はい、承知しています」

「でもさ、今日は良いことを教えてもらった。本田君、ありがとう。今日から寝る前の2時間くらいは、精神を開放してみよう!」

「はい。しかしそうすると、本を読む時間が減ってしまいますね」

「そこだよなぁ。俺は本を読むスピードが遅いんだよね。まぁ、その分集中して読み込むさ!」


ひとりごと

寝る前に読書をされている方は意外と多いのではないでしょうか?

かくいう小生もそんな一人です。

しかし、たしかに本を読んで寝た翌朝というのは、なにか目覚めが悪い気がします。

それは睡眠時間の問題もあるでしょうが、意外と脳がフル稼働してくれていたせいなのかも知れません。


【原文】
「晦(かい)に嚮(むか)いて宴息する」は、万物皆然り。故に寝(しん)に就く時は、宜しく其の懐(かい)を空虚にし、以て夜気を養うべし。然らずんば、枕上思惟し、夢寐(むび)安からず。養生に於いて碍(さまたげ)と為す。〔『言志晩録』第278条〕

【意訳】
『易経』に「夕方になったら休息する」とあるが、万物すべてそれに則っている。したがって眠りにつくときは、心の中を空っぽにして、夜の気を養うべきである。そうしなければ、床に就いてもあれこれと考えてしまって、熟睡することが難しくなる。それは養生においては妨げとなるであろう

【一日一斎物語的解釈】
眠りにつく前には、精神を開放する方がよい。寝る前の読書は熟睡の妨げとなる可能性がある。


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