今日の神坂課長は、久しぶりに「季節の料理 ちさと」を訪れたようです。

「ママ、お久しぶり。お店、開けたんだね?」

「あら、神坂君。さっそく来てくれたの? ありがとう! 緊急事態宣言も解除されたから、すこしずつでも営業させてもらおうと思ってね」

「ようやく、いつもの日常が戻ってくるのかな?」

「どうかなぁ?」

「どうしたの?」

「ウチのお店は狭いでしょう? お客さん同士の席が近いから、すこし距離をとるようなレイアウトにしないといけないんじゃないかと思ってるの」

「ああ、なるほど。COVID-19の前にはもう戻れないのか?」

「うん。でも、なんとか再開するよ。私は気づいたの。私にとって、このお店は私の命そのものなんだって」

「命そのものか?」

「だから、今回のお休みの期間は、死を疑似体験したようなものだった。きっと、自分が死んだら、こんな感じになるのかなぁって」

「そうかぁ。でも、俺も志村けん死亡のニュースの後は、しばらく死について考えたなぁ」

「悲しかったよね」

「でも、人間って、こうやって死を疑似体験しながら、本当の死に備えていくのかもね」

「そうね。だんだんと、死が怖いものではなくなって、自然に受け入れられるようになるのかなぁ?」

「そうだといいね。って、縁起でもないこと言わないでよ。俺はまだ、ママの料理をたくさん食べたいんだからさ!」

「うん、まだまだ死ねないよ。親も生きているし、順番は守りたいもの!」

「それで、今日は何を食べさせてくれるの?」

「まだ、生ものは出回ってないから、今日はおふくろの味を堪能してください」

「おお、肉じゃがか! それにホウレンソウのおひたし、最高じゃん!」

そのとき、お店の玄関の扉が開いたようです。

「いらっしゃい、あら、佐藤さん!」

「えっ、ああ、部長!!」

「おー、神坂君。さすがだね。さっそく来てたんだ?」

「ママからLINEが来ましたからね。これは、来いという合図だと思いましてね」

「実は、私も。(笑)」


ひとりごと

小生が住む愛知県は、緊急事態宣言が解除されました。

しかし、COVID-19流行の前の生活に完全に戻ることはないでしょう。

今回の出来事によって多くの価値観が変わりました。

新しい価値観に適応しながら、COVID-19とも共存していく時代の幕開けです。

とにもかくにも、希望を持って一歩踏み出しましょう!!


【原文】
死の後を知らんと欲せば、当に生の前を観るべし。昼夜は死生なり。醒睡(せいすい)も死生なり。呼吸も死生なり。〔『言志晩録』第287条〕

【意訳】
死んだ後のことを知りたいと思うのであれば、生まれる前のことを観るべきである。昼は生であり夜は死とみることができる。起きているときが生であれば、寝ている時が死である。さらに呼気は生であり、吸気は死であるともみることができよう

【一日一斎物語的解釈】
死後のことはわからないが、死生を疑似的に体験することはいくらでも可能である。


bousai_nikujaga