「季節の料理ちさと」での晩酌を終えて、佐藤部長と神坂課長は店を出て駅まで歩いているようです。

「そういえば、一斎先生は、四書を春夏秋冬に譬えていましたね。あれは面白いなぁと思いました」

「うん。そしてその順番がそのまま難易度を示しているんだよね」

「なるほど、そういうことですか。ということは、やっぱり『大学』から読むべきなのですね?」

「儒学の基本が書かれている書だし、なによりページ数も少ないので、入門編としては最適だろうね」

「そうかぁ、私は『大学』を飛ばして、いきなりサイさんに『論語』を学んでいるのですが、やっぱり『大学』は読んでおきたいなぁ」

「素読用の本もあるし、解説書もたくさん出ているから、1冊買ってみたら?」

「ああ、じゃあ駅前の本屋さんに寄ってみていいですか?」

二人は深夜0時まで開いている駅前の書店に入ったようです。

「ここはこだわりの本屋さんですよね。自己啓発系の本が充実しています」

「私も大型書店より、S町の大型書店よりこの『ブックランド・バディーズ』をよく利用するよ」

「ああ、ありました。『「新訳」大学・中庸』お、守屋洋先生の本だ。私はこの先生の解説が大好きなんです」

「独特のテイストがあって楽しいよね。『大学』と『中庸』をリーダーの視点で読む本だね。ちょうど良いんじゃない?」

「そうですね。ああ、こっちに角川ソフィア文庫の本もあります。これも中庸とセットなんですね」

「昔から、『大学』と『中庸』は一緒に本になっているケースがほとんどだね」

「もともとは『礼記』にあった篇だからですかね?」

「どうなのかな。二つまとめるとボリューム的にちょうどよいというのもあるかもね」

「なるほど、そうですよね。だって『大学』は最初に読むべき経書で、『中庸』は最後に読むべきなのに、一緒に入っているのはちょっと違和感がありますね」

「そこまで考えなくても良いんじゃない?(笑)」

「ははは、おっしゃるとおりです。よし、この2冊を買います。部長すみません、お付き合い頂いて」

「いやいや、私は本屋さんになら何時間でも居られる人間だから、まったく問題ないよ」

「まずは『大学』を読んで、春を感じるところからスタートさせてみます!」

「また、ともに語り合おう!!」


ひとりごと

一斎先生が四書を春夏秋冬に譬えていますが、それがそのまま四書を読む順序だと言われます。

儒学の基礎を学ぶ『大学』、孔子の教えを学ぶ『論語』、孔子の教えを発展させた『孟子』、そして誠という概念を完成させた『中庸』。

小生も、7月に『大学』を一日で読むイベントを立ち上げたところ、定員10名があっという間に埋まりました。

ありがたい限りです。

ご興味にある方は、コメントをお寄せください。


【原文】
四書の編次には自然の妙有り。大学は春の如く、次第に発生す。論語は夏の如く、万物繁茂す。孟子は秋の如く、実功外に著(あら)わる。中庸は冬の如く、生気内に蓄えらる。〔『言志耋録』第9条〕

【意訳】
四書の編纂には自然の妙味がある。『大学』を学ぶと、まるで春の季節のように徐々に成長していく。『論語』を学ぶと、まるで夏のように万物が成長し繁栄していく。『孟子』を読むと、まるで秋のようにその効果が実を結ぶ。『中庸』を学ぶと、まるで冬のようにわが身を鍛え、内に誠という生気を蓄えることができる

【一日一斎物語的解釈】
四書には読む順序がある。人が一年で春夏秋冬を体験するように、『大学』、『論語』、『孟子』、『中庸』の順に読むことで、自身を大いに修養できるのだ。


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