営業2課の石崎君が落ち込んでいるようです、
「少年、どうした? 女にフラれたのか?」
「そのとおりです」
石崎君が神坂課長を睨んでいます。
「あら、冗談で言ったつもりが図星だったのね? これは失礼」
「課長は、いつもノー天気でいいですよね。それに巨人も3連勝しましたしね」
「お前、上司に向って『ノー天気』はないだろ!!」
「課長、女にフラれたことって、俺にとって良いことなんですかね?」
「そんなわけないだろ! 女のいない人生なんて、巨人のいないセ・リーグみたいなものだ」
「たとえが全然わかりにくいんですけど・・・。でも、そうですよね!! 俺が女にフラれたことを、ある交流会で話したら、『おめでとう』とか言って、『それは良いことだ』なんて言ってくる人がいたんです」
「いるよなぁ、そういうポジティブの意味を勘違いしている奴な。お前らくらい若い世代ならまだしも、いい歳をしたおっさんでも居るからなぁ」
「やっぱり凹んで良いんですよね?」
「それはそうだ。人間、笑ったり、泣いたりするから人生が充実するんだよ。泣きたいときは泣けばいいんだ」
「そう言われた方が、よっぽど気分が楽になります」
「ただし、いつまでも凹んでいるのはどうかと思う。何がいけなかったのかをしっかり反省して、次に何をするかを明確にしたら、スパッと忘れることも大切だぞ」
「はい、この土日で俺のダメだったところはわかったつもりです。でも、もう一度付き合ってくれというつもりはないです。新しい恋を探します!!」
「いいねぇ、若いってのは。合コンに行くなら、俺も誘ってくれ!」
「嫌ですよ! どこの世界に上司と一緒に合コンに行く奴がいるんですか!! それに課長は結婚しているじゃないですか!!」
「ははは、そりゃそうだな。しかし、だいぶ元気が出てきたみたいだな。少年、次に彼女ができたときは、調子に乗らずに、相手を思いやれよ。女に対しては、やり過ぎかなと思うくらいでちょうど良いんだ」
「ありがとうございます。課長のノー天気さを見ていると、落ち込んでいるのが馬鹿らしくなります!」
「だから、上司をノー天気呼ばわりするなっつうの!!」
ひとりごと
人間は、首尾よく行ったときほど、勘違いをして、なぜうまく行ったかを振り返りません。
その結果、せっかくの成功を手放してしまうことにもなりかねません。
うまく行ったときこそ、慎みを持てという一斎先生の言葉を肝に銘じておかねばなりません。
一方、首尾よく行かなかったときは、凹み過ぎないことです。
しっかり反省し、改善すべき項目を見つけたら、あとはそれを実践すれば良いのです。
禍福終始は常にあるものと認識をして、過度に喜び、過度に悲しむようなことのない平静な心を手に入れるために、学び続けましょう!
【原文】
得意の物件は懼る可くして喜ぶ可からず。失意の物件は慎む可くして驚く可からず。〔『言志耋録』第32条〕
【意訳】
思い通りに事が運んだ事項については、恐れを抱かねばならない。逆にうまくいかなかった事項については、慎んで反省こそすれ、心を騒がせてはいけない。
【一日一斎物語的解釈】
物事がうまく行った時ほど、喜び過ぎず、気を引き締めなければならない。物事がうまく行かなかった時は、反省すべきであるが、落ち込む必要はない。