今日の神坂課長は、テニス部の練習試合で同級生に負けて落ち込んでいる次男の楽(がく)君を励ましているようです。

「負けるのは悔しいよな。どんな相手だったんだ?」

「この前までは、一度も負けたことがなかった奴だよ。たぶん1セットも取られたことがなかったと思う」

「実力的には、楽が圧倒的に上だったわけだな?」

「そう思っていたけど、今日のあいつは格下って感じじゃなかった。もう一回やっても勝てる気がしないよ」

「ということは、その子は相当練習したんじゃないのか?」

「うん。あいつは俺に負けるといつも泣いてた。いつか神坂に勝ちたいっていつも言ってた」

「今日のお前のような気持ちを何度も味わったってことだよな?」

「ああ、そうか。毎回、こういう気持ちだったんだなぁ」

「だから、めちゃくちゃ練習したんじゃないか? なぜ負けたのか、どこが自分の弱点かということも、しっかり分析したんだと思うぞ」

「うん。球をほとんどバック側に集めてきた。俺のバックが弱点だと思ったんだろうなぁ」

「ところで、楽は今まで何度もその子には勝ってきた。買ったときに、なぜ勝てたかという分析をしたか?」

「全然してない」

「勝って当然だと思っていただろう?」

「うん」

「だから、負けることは大切なんだよ。人間っていうのは、うまく行ったときは、それを振り返ったりしない。だから、何も学べないんだ。でもな、負けた時は、悔しいからなぜ負けたかをしっかり分析する。いろいろ勉強するきっかけになるんだよ」

「俺、徹底的にバックの練習をしたい。父さん、付き合ってくれる?」

「いいけど、父さんはテニス経験がないからなぁ」

「俺が付き合ってやるよ!」

いつの間にか、長男の礼君がそばに来ていたようです。

「兄ちゃん、頼むよ!」

「おお、礼。付き合ってやってくれ、練習場のコート代は父さんが出すからよ」

「よし、そうと決まったら今から行くぞ!」

「今から?」

「ナイター練習場がある。ちょっと高いけどね!」

「そ、それはいい! すぐに車を出すぞ」

「父さん、お金あるの?」

「ば、ばかやろう。そんなことは心配するな!」

なぜか神坂課長の声に元気がないのはなぜでしょう?


ひとりごと

この章句には大切なことが書かれています。

自分を高めるためには、失敗という経験が必要であることを教えてくれています。

中には、失敗などしなくても、常に自分を高めていくという人いるのかも知れません。

しかし、小生のような凡人は、失敗して、悔しさを感じて、這い上がるという生き方しかできません。

失敗は良しとして、失敗から学ぶ人生を歩みましょう!


【原文】
得意の事多く、失意の事少なければ、其の人知慮を減ず。不幸と謂う可し。得意の事少なく、失意の事多ければ、其の人知慮を長ず。幸と謂う可し。〔『言志耋録』第33条〕

【意訳】
首尾よくいくことが多く、失敗が少なければ、人は思慮分別を失いがちとなる。非常に不孝なことである。逆に首尾よくいかず、失敗することの方が多ければ、人は思慮分別を深めることができる。幸いなことではないか

【一日一斎物語的解釈】
物事がうまく行くときは、思考を深めることができない。失敗するからこそ思考は深まる。失敗することの意味はそこにあるのだ。


テニス