「マジかよ! なんだよ、ちゃんと点検してから発送してるんじゃないのかよ!」
電話切った営業2課の石崎君が大声を上げています。

「朝からうるせぇ小僧だな。何があったんだよ!」

「昨日、О社から届いた内視鏡の修理代替品を持ち込んだのですが、それが今朝使ってみたら、画像が出ないそうです」

「お前、施設で動作確認をしなかったのか?」

「はい。O社は備品センターでちゃんと点検してから出荷してくれるから大丈夫だと思って・・・」

「そりゃあ、お前にも責任の一端はあるぞ。ということは、当社の責任でもあるわけだ」

「課長、O社の担当を怒鳴りつけてくださいよ。まったく、どうすれば良いんだよぉー」

「お前、慌て過ぎだぞ。施設はどこだ?」

「土佐山内科です」

「マジか!? それはヤバいな。あそこの院長は超がつくクレージー親爺だからな」

「すでにブチ切れてます。もう終わりだ。出禁確定です」

「落ち着け少年! こうなったら、近隣の施設に頭を下げて借りるしかないな。機種は何だ?」

「QP270です」

「マジで? そんなマニアックなスコープを使ってるのかよ。そいつは絶望的だな。だが、何か手はあるはずだ、あきらめるなよ」

「なんで、そんなに余裕があるんですか?」

「少年、ジタバタしたら解決策が浮かぶのか? むしろ、落ち着いて、ゆったりと頭を動かした方が良い策が浮かぶはずだろう」

「あーあ、あの爺さんのところに謝りに行くの嫌だなぁ。下手すると物を投げつけてくるかもしれませんからね」

「だから、まだ諦めるのは早いっつうの! 必ず解決策は見つかるからな」

「神坂課長の根拠のない自信は凄いですね。全然、慌ててないもんなぁ」

「昔の課長は、いまの石崎君より酷かったよ。(笑)」
心配した山田さんがいつの間にか石崎君そばに立っていました。

「そうなんですか?」

「後輩が借りている代替品を無理やり回収して来いと言ったり、O社さんに電話して、耳を塞ぎたくなるような暴言を吐きまくっていたからね。(笑)」

「課長も成長しましたね。(笑)」

「石崎! てめぇのためにこっちがいろいろ考えているのに、何を笑ってやがるんだ!!」

「石崎さん、どうしたんですか?」
石崎君の隣に座っていた梅田君が耳からヘッドホンを外して、石崎君に聞いたようです。

「あ、梅ちゃん。実はさ」
石崎君がことの顛末を梅田君に話したようです。

「あー、俺、QP270の貸出品を持ってますよ」

「マジで!?」

「ちょうど、今朝返却しようと思っていたんです」

「梅ちゃん、もっと早く言ってよぉ~」

「いや始業前なんで、大音量で音楽聞いてたもんで。で、横をみたら石崎さんがなんだか慌てているみたいだったから・・・」

「ほらみろ、少年。ちゃんと解決策があっただろう」

「これ、解決策って言えますか? ただの偶然じゃないのかなぁ?」

「ばかやろう! 俺が落ち着いて行動したからこそ、代替品が見つかったんだよ。ねぇ、山田さん?」

「えっ、あ、そうですね・・・」


ひとりごと

緊急事態が発生したときに、いかに冷静な対応が取れるかが、リーダーに求められる資質のひとつかも知れません。

メンバーが慌てているときこそ、落ち着いて、冷静に、正しい判断を下すことが求められます。

そのために、日ごろからの修養が必要なのです。

決して、慌てふためき騒いだところで、解決策は浮かんできませんからね。


【原文】
気象を理会するは、便ち是れ克己の工夫なり。語黙動止(ごもくどうし)、都(すべ)て篤厚なるを要し、和平なるを要し、舒緩(じょかん)なるを要す。粗暴なること勿れ。激烈なること勿れ。急速なること勿れ。〔『言志耋録』第39条〕

【意訳】
自分の気質を把握することは、そのまま克己の工夫へとつながる。語ること黙ること、動くこと止まること、すべてにおいて人情に厚く誠実で、落ち着いて穏やかで、ゆるやかでゆったりとしていることが重要である。荒々しく、激しく、せかせかしているようではいけない

【一日一斎物語的解釈】
日々の行動において、常に誠実に、落ち着いて、ゆったりと行動することを心がけよ。荒々しく、激しく、慌ただしく動くことを厳に慎むべきである。


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