今日の神坂課長は、佐藤部長とお得意先の定期訪問をしているようです。
「あー、もう。前の車が遅すぎるから、信号が赤になっちゃったよ!」
「神坂君、そんなに急いだって10分も変わらないよ。安全運転でいこう」
「なんで、全体の流れに乗って運転できないんですかねぇ」
「神坂君は、うさぎとかめの話を知ってるでしょ。あの話にはどういう教えが隠されていると思う?」
「それは簡単な質問ですよ。サボることなくコツコツやることが大事だということではないのですか?」
「それだと50点だな。ひとつは休まずコツコツやることの大切さを教えてくれている」
「他にもあるのですか?」
「うん。急がず慌てず、自分のペースを守ることの大切さも教えてくれているんだよ」
「なるほど。かめはあくまでも自分のペースを守り続けたのか」
「そう。もし、かめがうさぎのペースに合わせようとしたら、オーバーペースになって、途中でダウンしてしまっただろうからね」
「他人のペースは変えられないのはわかるのですが、自分のペースを相手に合わせてばかりいたらストレスになりますよね」
「だから、相手のペースに惑わされないように、自分の進むべき道に集中するんだよ」
「なるほど」
「一斎先生は、天地の運行というのは『休まず急がす』進んでいると言っている。まずは、自分のペースというものをよく把握しておくことが大切だよね」
「はい」
「その上で、周りに影響を受けずに、そのペースを休まず守り続けていけば、天地の運行と波動が一致して、物事が成就すると言っているんだ」
「なるほどなぁ。まさか車の運転中にもそのような鍛錬のチャンスがあったなんて知らなかったなぁ」
「心の鍛錬をする道場は実生活のあらゆる場面にあるものだよ」
ひとりごと
「休まず・急がず」、あまりにもシンプルなメッセージですが、シンプルだからこそ実践するのは難しいことなのでしょうか。
一斎先生は、それこそが天地の運行であり、自然の摂理に適っているのだと言います。
休んだり、急いだりすれば、自然の摂理とのバランスが崩れて、物事はうまく進まない、ということのようです。
まだまだCOVID-19の猛威は続いているようです。
ここは、休まず・急がずで過ごしてみませんか?
【原文】
一息の間断無く、一刻の急忙無し。即ち是れ天地の気象なり。〔『言志耋録』第44条〕
【訳文】
一瞬も休息すること無く、また少しも慌てることもしないのは、天地の気象である。
【所感】
一瞬も途切れることなく、一刻も急ぐことがない。これこそ天地の気象である。